いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「カササギの計略」

カササギの計略 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
カササギの計略 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

僕が講義とバイトを終えてアパートに帰ると、部屋の前に見知らぬ女がしゃがみこんでいた。彼女は華子と名乗り、かつて交わした約束のために会いに来たという。なし崩しに同棲生活を送ることになった僕は、次第に華子へ惹かれていくが、彼女は難病に侵されていて、あとわずかな命しかなかった……。ともに過ごす時間を大切にする二人。しかし、彼女にはまだ隠された秘密があった――。

『このミス』今年の隠し玉。




さえない大学生の元に美人が転がり込んでくるという一人身男子が妄想しそうな状況に、別れを予感させる難病の存在。切ないラブストーリーには大変ありがちなベッタベタなシチュエーションに少しの苦笑しながらも、甘味好きとしては期待もしてしまうオープニング。
でもこれは『このミス』大賞シリーズで、帯では「ホワイトどんでん返し」を謳っている。さて、どうやって騙してくるのか……。
黒幕(と言っていいのかは不明)の正体と種明かし、想定内。彼女の正体、想定内……!? どんでん返しってここか! 彼女の時々見せていた辛そうな様子とちょっと変な言葉の本当の理由がわかった時の、腑に落ちる感じの気持ちよさは、まさにミステリ。
でもこれ、ホワイトだったのか?
胸の内に溜めた黒いものが溢れ出ている種明かしに、真っ先に「因果応報」という言葉が浮かぶ結末。この先、彼女が負い目を感じず暮らせることを願うばかりだが。
今思うと読み方を失敗した気がしてならない。初めから恋愛小説として読めば素直に泣けていた気がするのに。ミステリと言われると、どうしても読み方がミステリになってしまう。