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「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン XI」宇野朴人(電撃文庫)

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXI (電撃文庫)
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXI (電撃文庫)

イクタ・ソロークの推挙によって、三等文官として国政に携わることになる少女ヴァッキェ。アナライ博士の弟子で、イクタの妹弟子でもある彼女は、たしかに尋常な人材ではなかった。
国政の場では、誰もが畏れる女帝が相手であっても理路整然と反論を声高に唱えて周囲を凍りつかせ、日常生活では、シャミーユの食事の場に乗り込んでいって「一緒に楽しく食べよう!」と女帝の顔をひきつらせる……。
その無邪気さと人懐っこさと狂気を発揮する彼女によって、硬直した帝国や女帝シャミーユは、どのように変わっていくのだろうか――。

イクタの復活にハロの本性の暴露と激動だった10巻の後という事で、帝国の新体制や今後の展望を見せていく大人しめの回だった。明言されているわけではないが新章スタートと言ったところか。
メインキャラ二人が一段落なところで、ようやくこれまで一番無理して頑張ってきた人物にスポットが当たった。そうシャミーユ殿下だ。
ヤトリのことがある前から、それこそ1巻から根が優しくて賢いばかりに必要以上に不幸と苦労を被って来たことは知ってはいたけれど……。王としても少女としても相応しくない自分への厳しさや、常態化している心の自傷行為。こうもまざまざと実状と心情を突きつけられると胸が締め付けられる思いだ。
そんな彼女を“普通の少女”に戻そうと、前回の最後にイクタが連れてきたヴァッキェが引っ掻き回し、イクタが宥めて甘えさせてと奮闘する話だったが、これは前途多難だ。このシリーズだと改善する前にどこかで崩壊しそうで怖い。
そんなわけで、シャミーユを話の中心にした基本的には政務の回だったが、後半に一騒動あってこちらはハロがメイン。前回の事件を受けてのハロの覚悟のほどを見せる話だったのけど、相変わらず容赦がない。ケジメってことなんだろうけど、これしばらく出てこれないんじゃ。舞台が変わったからしばらく出番なくてもいいのか?
話が急展開を見せたところで次回へ続く。最後の最後に突然の乱入で作中の人物も読者も驚かせたあの人が何をやらかしてくれるのか、本当に楽しみ。