いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係2」久遠侑(ファミ通文庫)

近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係2 (ファミ通文庫)
近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係2 (ファミ通文庫)

雨宿りのなか、突然の由梨子からのキス。幼い頃より長い時間を過ごしてきた彼女から、異性としての気持ちを突きつけられた健一だが、ともに暮らし始めてわずか二カ月の里奈への感情も混じり合い、由梨子に返事をすることができないままでいた。夏、秋と、これまでとは違う里奈のいる季節を経て、子供の頃とは確実に変わった自分、そして周囲との関係を受け入れていく、健一の選ぶ答えとは――。
多感に揺らめく十七歳を映し出す、恋愛ストーリー第二巻。

ああ、やっぱりいいなあ。
美少女と一つ屋根の下という状況にも慣れたのか、他の悩みでそちらに気がいかなくなったのか、健一のソワソワした感じがなくなって1巻よりもより淡々と日々が描かれる。その静かな描写がリアルというか生活感があるというか、本当にありそうな日常を切り取っている感じがして、彼らが身近にいるような感覚になった。
うん、十七歳という多感な時期を日々悩みながら、でもちゃんと青春を謳歌している様子を眺めているだけで意味もなくニマニマしてしまうね(←おじさん気持ち悪い)。これが青春だと彼らが気付くのは何年か後に振り返った時なんだろうなあ……なんて思ってしまうのも彼らを身近に感じられたからだろう。
それに、主人公健一の心理描写が変わらず丁寧で細やか。健一自身の言葉と、それ以上に雄弁に語る健一が見る風景の中に見える心境の変化。その二つで描写される“悩める少年”が瑞々しい。
そんな健一が出した答えは……そうか、そっちか。1巻の時点からすると意外だけど、この巻を読めば納得かな。落ち着いていく里奈との関係と、落ち着かなくなっていく由梨子との関係の対比で道筋が出来ていたから。その辺りの心境の変化の過程も実に見事。何よりちゃんと答えを出してくれたことでスッキリ読み終えられた。終わってしまうことに寂しさはあるけれど、十七歳という一瞬を切り取った作品で、長く続けて良いものになるタイプの作品ではないしね。
唯一の心残りは傍から見た仕草だけでも感情が分かりやすい由梨子と違って、里奈の本心が分かる描写が少ないことか。まあ出てこないってことは家族以上は感情は無いのかもしれないな。「ちょっといいな」くらいでは友達になった由梨子に申し訳ない気持ちの方が先に立つだろうし。
若者らしい清潔感のある恋愛模様に、彼らの息遣いが聞こえそうな生っぽさが同居する青春ラブストーリー。こんなに青春を濃く感じられる作品を読んだのは何年振りだろう。とても面白かった。控えめに言って最高でした。
次回作も楽しみだけど、その前に是非とも関連作をお願いしたい。




……というか、カクヨム掲載分を書籍化してください、お願いします。
あのサイト、一画面当たりの文字数が少ないのとフォントが微妙に滲んでるのが読み辛くてしょうがない。ずっと白い画面視てるのは目が痛いし。