いつも月夜に本と酒

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「やがて恋するヴィヴィ・レイン2」犬村小六(ガガガ文庫)

やがて恋するヴィヴィ・レイン (2) (ガガガ文庫)
やがて恋するヴィヴィ・レイン 2 (ガガガ文庫)

近衛連隊を追われたルカは放浪の末、旧友ジェミニとの再会を果たす。昔の借りを返すためジェミニの庇護下に入ったルカだが、ジェミニの思惑はルカの想像を遥かに超えて、ガルメンディア王国を揺るがす大事件が勃発する……。「災厄の魔王」ルカと「褐色の皇帝」ジェミニ。一千年にひとりと称される巨大な軍事的才能が、眩いばかりの才能と才能の相克を世界史に刻む。そして王女ファニアもまた、自らの意志により歴史の表舞台へ……。「いつかこの国で革命を起こす。きみにもう一度、会うために」。加速する恋と会戦の物語、第二巻。

1巻が出会い編ならば、この2巻は約束編。今度こそ袂を分かつであろう二人が、途方もなく夢物語な再開の約束をするまでの物語。
かなりの駆け足で物語が一気に進んだなという印象。
1巻の時点ではルカが革命の王になるには紆余曲折ありそうな様子だったのに、まさかこんなに早くその片鱗を見ることになるとは。それでなくても危なっかしいアステルとの二人旅なのに、時代の波に翻弄されるルカとアステルに焦燥感は増すばかり。
まあその分、アステルとの結び付きはかなり強くなったけど。アステルの場合はファニアと違って恋人というよりも家族を求めている感じかな。それでもアステルがルカに心を許していく過程と彼女持ち前の陽気さが、戦争の影が濃い物語の中でホッと一息つける間だった。但し、こうやって助ける理由が出来てしまったという事はこの物語の場合、ルカが死ぬ思いをする要素かつ読者が涙する要素が増えたということなんだろうな。
さて、メインヒロインというよりはもう一人の主人公といった体のファニアの方は、
旅の仲間がいたり上辺だけでも味方してくれる人物がいるルカと違い完全な孤軍奮闘。味方が誰もいない状態でこちらの方が読んでいて辛い。
そんな極限状態だから、ルカと会った時にあんなになってしまうんだろう。聡明なファニアの詰めの甘さに年相応の少女らしさが見えて愛おしい……のだけど、その感情が溢れてしまった些細なことが、1巻でも2巻でも二人にとっての致命傷になっているのが悲恋を濃くしている。まったく作者も人が悪い。
でも、このペースなら再会の時はそんなに遠くないのではと思っていたら、最後にルカの軽い返事と共に重大な事実がサラッと書かれているような?
もしかして、ファニアが視る未来は通過点でしかないってことなんだろうか。結構駆け足な展開で随分進んだつもりだったのに、逆にゴールが見えなくなった。長い物語になりそうだ。
未来のある一点は確定しているのに先の展開が全然読めなくて今後が楽しみ。