いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「君は月夜に光り輝く」佐野徹夜(メディアワークス文庫)

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)
君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

大切な人の死から、どこかなげやりに生きてる僕。高校生になった僕のクラスには、「発光病」で入院したままの少女がいた。月の光を浴びると体が淡く光ることからそう呼ばれ、死期が近づくとその光は強くなるらしい。彼女の名前は、渡良瀬まみず。
余命わずかな彼女に、死ぬまでにしたいことがあると知り……「それ、僕に手伝わせてくれないかな?」「本当に?」この約束から、止まっていた僕の時間が再び動きはじめた。
今を生きるすべての人に届けたい最高のラブストーリー。

第23回電撃小説大賞<大賞>受賞作



難病を患うクラスメイトの女子の下へのお見舞いを押し付けられたことから始まる青春ラブストーリー。
いわゆる難病もので、病気は架空の病気ながらストーリーは王道中の王道。彼女の方がわがままを言い、惚れた弱みでそれにしたがってしまう彼氏と言う構図もよくあるパターン。
その中で、彼の方が姉の死によって心に大きな傷を持った「死にたがり」であることが本作の最大の特徴。死期が近い彼女に加えて、死についてばかり考える彼の存在で普通よりも死の気配が濃い。彼が彼女に惹かれる理由が物悲しいことや、最期の時が近づく彼女を見て悲しむでも憐れむでもなく追い詰められていく彼の姿に、死ぬという事を生々しく感じさせられる。
……と、冷静に分析できてしまっているのは、泣けなったから。
難病ものに限らずお涙ちょうだいな作品は大好物で、自分で言うのもなんだが非常に涙もろい。先月も再読なのに『命の後で咲いた花』でボロ泣きしたし、先日『りゅうおうのおしごと』でも貰い泣きしたばかりだ。でも本作では、彼女の生前の最後の願いのシーンで少しうるっと来たくらいで涙は出なかった。何故だか琴線に触れなかった。
新人賞作品とは思えない出来の作品で、いくつもの「死」を通じて「生きる」という強く印象付けて考えさせるいい作品だったと思う。ただ、泣けるはずだったのに泣けなかったのでモヤモヤしている。