いつも月夜に本と酒

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「新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 II」支倉凍砂(電撃文庫)

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙II (電撃文庫)
新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙II (電撃文庫)

町アティフでの聖書騒動を乗り越えた、青年コルと賢狼の娘・ミューリ。恋心を告げて開き直ったミューリから、コルは猛烈に求愛される日々を送っていた。
そんな中、ハイランド王子から次なる任務の依頼が。今後の教会勢力との戦いでは、ウィンフィール王国と大陸との海峡制圧が重要になってくる。そのため、アティフの北の群島に住む海賊たちを、仲間にすべきかどうか調べてきて欲しいというのだ。
新たな冒険に胸を躍らせるミューリだったが、コルは不安の色を隠せない。なぜなら海賊たちには、“黒聖母”信仰という異端の嫌疑がかけられているのだ。海賊の住む神秘の島への旅が始まる!

狼と香辛料』の次世代の冒険第二弾は船に乗って小さな島々へ。



コルの情けなさだけが浮き彫りになったような話でスッキリしない。
ミューリの言葉で覚悟を決めたと思ったらこれかい。コルは結局“コル坊”でしかないのか。むしろ昔の方が少年にしては頭が切れて抜け目がなかった印象が。コル少年はロレンスとホロに拾われる前は辛い想いをしてきたけど、コル青年は長いぬるま湯生活で腑抜けたのかな。歳の離れた年下の少女(ケモミミ付き)に尻に敷かれる青年の情けない姿を描く。これは『狼と香辛料』ではなく『マグダラで眠れ』の続編ではあるまいか?
今のところ本家『狼と香辛料』に比べて、ホロという保険がないハラハラ感があるだけで他に何もない。
ホロの前では形無しでもロレンスはひとかどの商人だったから、商人たちの相手の裏をかく騙し合いが楽しめたけど、コルは人が良すぎて駆け引きがない。それでいて相手は損得勘定で動く分かりやすい商人ではなく、教会や貴族などの腹の底で何を考えているのか分からない魑魅魍魎。主人公の戦力と敵の戦力のバランスが悪くて、楽しむところがどこか分からない。
それに、ミューリとコルのやり取りも前とさほど変わらないし。そもそも年下のミューリがお守しているよう状態では、甘い空気にもならないよ。
今回の苦い経験を糧にコルが変わっていくことに期待しよう。成長譚になれば本家とは違う味も出てくるだろうし。