いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「勇者は、奴隷の君は笑え、と言った」内堀優一(ノベルゼロ)

勇者は、奴隷の君は笑え、と言った (Novel 0)
勇者は、奴隷の君は笑え、と言った (Novel 0)

『笑え、おかしくなくても笑えばそのうちおもしろくなってくる』――とある山村で村人たちから奴隷のような扱いを受ける少年ヴィスは、村はずれに住むやたらと明るい男グレンにずっとそう言われ続けてきた。やがて、長き眠りから魔王の復活が迫った頃、とある事件からヴィスはグレンがかつて世界を救った勇者だと知る。そして二人は村を出て、世界を周る旅に出発。魔法使いの少女ニーニとの出会い、初めての大きな街、暁森人の住む森でのこと――
勇者と旅した時間のすべてが、大切な何かを失った少年を、ひとりの“勇者”に変えていく。これぞ、必読の“男泣きファンタジー”!


とてもスケールの大きいファンタジーで、元勇者が若者たちを導く成長譚でもあって、ファンタジー好きなら文句なしに高揚する話に、、、なっていたかもしれない。全五巻、少なくても全三巻くらいの作品ならば。若者たちの群像劇でもいいかもしれないな。
というわけで、残念ながらそうならなかった物語。
ストーリーがとても一冊で収まり切る量ではなかったため、展開はひたすら駆け足。それに加えて、タイトル通りに元奴隷な主人公ヴィスが精神的にぶっ壊れていて無感情で無感動。彼の精神的な成長がメインテーマの一つではあるが、それをじっくり味わえるような話のスピードではなく、彼の無感動はそれでなくてもテンポが良すぎる話をさらに淡泊にする効果しかなった。
帯やあらすじに男泣きのファンタジーとあるけれど、ヴィスの涙は“男泣き”ではないし読者も流石にこの淡泊さでは泣けない。小説を読んでいるというよりはシナリオを読んでいるようだった。
あまり長期的な視点の作品が見られないノベルゼロで出すべき作品ではなかったのかもしれない。