いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ぶたぶたラジオ」矢崎存美(光文社文庫)

ぶたぶたラジオ (光文社文庫)
ぶたぶたラジオ (光文社文庫)

東京のAMラジオ局で、朝の帯番組のパーソナリティを務める久世遼太郎は、木曜日の新しいゲストに、山崎ぶたぶたという人物(?)を迎えることになった。ぶたぶたの悩み相談コーナーは、一味違う答えがもらえる、とすぐ大人気に。今日もラジオに耳を澄ませると、ぶたぶたの渋い声が聞こえてくる。それだけで、不思議と心が落ち着くんだな。胸に響く三編を収録。

今度のぶたぶたさんはラジオパーソナリティ
と言っても週一度木曜午前のゲストパーソナリティでお悩み相談コーナーを受け持つだけだけど。一応『ぶたぶたの本屋さん』の続編なので、その本屋さんで水曜にやるコミュニティFMもあるから、ぶたぶたさん的には週二度になる。この世界の人は週に二度もぶたぶたさんの落ち着いた渋い美声のラジオで聴けるのか……羨ましい。ぶたぶたシリーズには珍しく一話目が短編と言うには長いため、いつもは4〜5話が通例なのが今回は全三話と少なめ。
その一話目はぶたぶたさんをスカウトした、そのラジオのメインパーソナリティの悩みで、ソリが合わない妻と子供の話。問題に対して意外にもストレートな物言いのぶたぶたさんに驚きつつ、外野から見ればデリケートな話をボソッとでも父親に漏らせるような家庭なら大丈夫だよと思う、そんな話。
二話目は人気女性アナウンサーの悩み。職種の違いか性別の違いか、正直彼女の悩みには共感できるところは少ない。しかし彼女がぶたぶたに抱く想像や感想がことごとく事実と外れていて、何度もツッコミが入れられる、長年のぶたぶた読者には別のところで楽しい話。
三話目はリスナー(四十代女性)の悩み。
他人のSNSを見て羨んでいるおばさんに「それはハイライトだから普段の生活はあなたと大差ないぞ」と思いつつ、女性の悩みはあまり共感できないのかなと読んでいたら、最後にちょっと意外な展開が。
会って話したぶたぶたさんに、またSNS仲間の友達に対して、思い付いた一言を飲み込む勇気とその何気ない理由に感銘を受けた。自分が思ったことがすぐ口に出てしまうタイプなので余計に。
最後の最後に思いがけない言葉に出会って良い読後感。