いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「百万光年のちょっと先」古橋秀之(JUMP j-BOOKS)

貴方が眠りにつくまでに「彼女」が語り聞かせてくれるのは、
5分間で味わえる「すこしふしぎ」な驚き、恐怖、感動のストーリー。
古橋秀之が紡ぐ珠玉の物語を、矢吹健太朗の美麗イラストが彩る、
奇蹟のショートショート集。

旧型のメイドロボがぼっちゃまの寝物語として語るSFショートショート48編。


SF(サイエンス・フィクション)にふさわしいスケールの大きい話があれば、SF(すこしふしぎ)を自称するのが納得な物差しがぶっ壊れてるだけの話も共存している不思議なショートショート集。「宇宙スゲー」(小並感)が最もしっくりくる感想かも。
その荒唐無稽な作品群を不自然なくまとめているのが、語り部メイドロボのキャラクター性。
ぼっちゃまにお灸をすえる為なのかわざわざ怖いオチにしてみたり、恋愛事が絡むとオチのテンション高かったり、話のオチにかこつけて彼女の失敗を誤魔化してみたりと何かとお茶目で、どんなスケールの話でも「これは寝物語。どこかで聞いたことのあるおとぎ話の単語の頭やお尻に「宇宙」や「星」をくっ付けただけみたいな話もあるのだが、彼女のとぼけたオチまで読んでしまうと、これはこれでありかなと思えてしまう。
宇宙に飛ばされたと思ったら急に地上に引き戻される、忙しくも楽しい不思議な読書時間だった。普段の読書習慣で一気読みしてしまったが、夜寝る前に少しずつ読み進めていく方がより楽しめると思う。なんだかんだでSFなので、文系より理系の方がより楽しめるのは間違いなさそう。
お気に入りは、発想力に驚かされる『パンを踏んで空を飛んだ娘』。超科学のスケールと中身のしょーもなさのギャップが素敵な『偉大なるバニラ味の総統』。