いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「はたらく魔王さま!20」和ヶ原聡司(電撃文庫)

「勇者が魔王の城に攻め込むのは自然なことです! 魔王が勇者の自宅に来るなんてことはあり得ません!!」
アシエスの暴走した食欲に続き、姉であるアラス・ラムスにも異常が発生してしまう。娘を救うため、頑なに拒否する恵美を説得し、永福町にある恵美の自宅に行くことになった魔王。玄関で履かされたスリッパ、大きな冷蔵庫、部屋についているお風呂と、六畳一間の魔王城との格差に圧倒されつつ、親子三人の同居生活が始まるのだが……。
一方、異世界エンテ・イスラでは各国の調整が最終段階となり、いよいよ魔王城が打ち上がるのか――!?


千穂、暗躍す。
異世界の平和のためにエンテ・イスラと日本を駆けずり回る日本の女子高生。一方で日本では、魔王と勇者が子供のために初めての同居でドタバタ。ついに立場が完全に逆転してしまった。
どう読んでも主人公は千穂。だって、魔王と勇者は女子高生の手のひらで踊っているだけだもの。これじゃ『はたらく女子高生さま!』だ。まあ悪魔大元帥だけど。
物事を正しく判断する力、そこからゴールへの道筋を導き出す頭脳、その道筋に必要な交渉力、事務処理能力、視野の広さ、決断力、胆力、おっぱい。どこをとっても超高校級。元々、ファンか信者かというくらい千穂好きな自分でも、この八面六臂の活躍には、喜ぶよりも「ほえー」と感心することしかできなかった。この有能女子高生、年俸いくら出したら雇えるんでしょうね。
おかげで魔王と勇者は庶民派ファンタジーの完全な日常担当に。異世界人なのに。
ただその日常感も、アラス・ラムスちゃんの存在が作ってるような気がしないでもなく、本気で魔王も勇者もただの脇役なのでは?と悩む内容だったという。芦屋も久しぶりに帰ってきたと思ったらあれだもんなあ(挿絵www)。気苦労と心中お察しします。
事態は動いたし、大好きな千穂の活躍だったこともあって、ここ最近では間違いなく一番面白い回だった。
これで千穂の頑張りに応えてくれないと、男じゃないし主人公じゃない。次はやってくれるはず……と思ったのに、ヘタレが極まって作戦にも影響が出そうな終わり方でズコー。この魔王、もう要らないくない?