いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「15歳でも俺の嫁! 交際0日結婚から始める書店戦争」庵田定夏(MF文庫J)

15歳でも俺の嫁! 交際0日結婚から始める書店戦争 (MF文庫J)
15歳でも俺の嫁! 交際0日結婚から始める書店戦争 (MF文庫J)

「今すぐにここから外に出て、わたしと結婚、したくない?」
大手出版販売会社に勤める火野坂賢一(27歳・平社員)は、ある日、初対面の少女に求婚される。怪しすぎる事態にも焦らず、彼は冷静に答え――「わかった。結婚しよう」あれ? 俺今なんて言った!? 動揺している間に少女・君坂アリサの自宅に連れ込まれた賢一をさらなる衝撃の事実が襲う! 「わたし15歳の現役JCだし、法律上結婚できないから大丈夫!」「大丈夫じゃねぇええ!」一方、仕事でも賢一は、カリスマJC・MARIAとの連載企画、企画本を進めていたのだが……? 「ワタシはおじさんでも全然恋愛対象だけどね~」2人の15歳に振り回される日々が始まる!?

炎上恐怖症てw 笑っちゃいけないけど笑ってしまった。ネタにできるってことはもう大丈夫ってことなのかな。
原作者は一切関係ないに背負わされてしまった作者の悲しい過去は置いといて、


大手の取次の社員と最大手書店チェーンの孫娘が、書店の危機に立ち向かう物語。社会人とJCの歳の差カップルと出版関係のお仕事小説という今流行のテーマを掛け合わせて、ライトノベルらしくドタバタコメディに仕上げた作品。
書店に対する愛と情熱は本物だった。本編のあちこちで語られる主人公・火野坂とヒロイン・アリサの、熱っぽく時々マニアックな書店への思い入れには全面的に同意で、そんな二人が紡ぐ物語なので共感出来る場面が多いのが良いところ。それに、書籍の流通を詳しく解説してくれる章間も興味深い。
ただストーリーに関しては、「お、おう」って感じだった。
理屈より勢いを大事にした話の展開は、熱さやスッキリ感に繋がってエンタメ小説らしいと思うし、個人的にも好きな話のタイプではある。でもそれは内容と合っていればの話。これを舞台が現実世界で、しかも社会・経済が絡んだ話でやるのは、例えライトノベルであっても相当に相性が悪いように思う。そもそもこれで逆転できるか疑問だし、後出しで理屈を出されたら負ける状況になってしまうから。

庵田先生の作品は「高い理想を懸命に追いかける若者達の青春」というコンセプトがデビューから一貫していて、とても好ましく思っているのだけど、作品を重ねるごとに説得力がなくなってきている気がするのが残念でもどかしい。しかも今作は読んでいる側が恥ずかしくなる青臭い台詞も少なくて寂しさもプラス。