いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「86―エイティシックス― Ep.5 ―死よ、驕るなかれ―」安里アサト(電撃文庫)

86―エイティシックス―Ep.5 ―死よ、驕るなかれ― (電撃文庫)

探しに来なさい――。
シンが聴いた〈レギオン〉開発者・ゼレーネと思しき呼び声。レーナたち『第86機動打撃群』は、その姿……白い斥候型が目撃されたという「ロア=グレキア連合王国」へと向かう。……だが。
それは生への侮辱か、死への冒涜か。
連合王国」で行われている対〈レギオン〉戦略は、あの〈エイティシックス〉たちですら戦慄を覚えるほどの、常軌を逸したものであった。
極寒の森に潜む敵が。そして隣り合う「死、そのもの」が彼らを翻弄する――。
連合王国編》突入のシリーズ第5巻!

連合王国編前編。



レーナとシンが離れたりくっ付いたりのもどかしい恋愛模様を見せている間に、アンジュがこちらの舞台に上がってくるとは。最近すっかり影が薄いクレナさんェ…。それにしても、シンがそっち方面の冗談を言ったのには驚いた。これも一つの人間らしさの獲得のような気がするが、本人に自覚はないだろな。
さて、合間の緩衝材ラブコメの感想はこれくらいにして、
登場人物たちへの容赦のなさと、人間の醜い部分を曝け出すことに定評のある本シリーズ。当然のように目を背けたくなるものをいっぱい見せられてきたのだが、今回はこれまでで一番悪趣味。
〈シリン〉。連合王国が対〈レギオン〉のために作り出した兵器は、共和国の思想と〈レギオン〉の技術を掛け合わせたような、強力にして生理的嫌悪感MAXの人型兵器。彼女らの存在が、エイティシックスたちが外からどう見られていたのかを、人に非ずというレッテルを張られ続けてきた当のエイティシックスたちに突きつける。
彼らに生きることの意味を考えさせるには、必要な通過儀礼なのだろうが、これを悪趣味と言わずしてなんと言う。特にラストの作戦とかもうね……。しかも、当人たちとレーナ他その周りの人達が〈シリン〉とその運用法を見て、何を思い、何を考えるのかが主題なのに、誰の台詞も誰の思考も、結論が出ないまま次のシーンに移ってしまうので、一つもスッキリするところがないという。まあ、前編だから当たり前なんだけどさ。
早く後編を!