漫画雑誌「月刊ゼロ」の若き編集長・眞坂崇は、クセ者揃いの編集部の面々や漫画家たちに翻弄される毎日を送っている。そんなある日、天才肌だが変人の編集者・蒔田が担当する漫画家の作品と全く同じ内容の映画企画があると知る。盗作を疑う眞坂は作品を守ろうと決意するが……。漫画業界を舞台に、全てをかけて何かを生み出そうとする漫画家たちと、彼らに寄り添い支える編集者たちの奮闘を描く大人の青春小説、第2弾!
第3回角川文庫キャラクター小説大賞《大賞》受賞作、漫画雑誌の編集部を舞台にした『次回作にご期待下さい』の続編。前回同様、中編二話構成。ちなみにこの賞で続編が出たのは本作が初めて(だったはず)
眞坂さんのいい人“過ぎ”さに磨きがかかっていた。
無茶苦茶で傍若無人な周りの奴らにイライラしたり(特に蒔田とホラー漫画家)、そいつらに振り回され一人割を食う眞坂さんの姿に泣けてきたり、上司はそれなりに理解者で少しホッとしたり。そしてどんなに酷い目にあっても、最後は理想を追う少年のようなピュアな答えを導き出す眞坂さんに、ほっこりもするけど呆れもする。とまあ、眞坂さんの度を越した人の良さのおかげで感情の忙しいこと。「まったく、しょうがないなこの人は」というが一番しっくりくる言葉かな。
眞坂さんには是非一度長期休暇を取って、周りの奴らを困らせてもらいたい。それを「ざまあ」と言いながら読めればどんなに気持ちが良いだろうか。まあ、彼の性格からして出来ないだろうけど。いやでも、過労で入院ならワンチャン?←
と、ぶーぶー文句を言いながらも最後まで面白く読めてしまうのは、人間ドラマの濃さだろう。
2巻も変わらず、漫画に対する情熱をほとばしらせる編集者たちと、苦しむ漫画家たちの人間ドラマ。
心優しい作者と心優しいファンが知らずに支え合っていた優しく切ない話から、勧善懲悪なラストが気持ちいい「白い宇宙のビッグバン」。少ない手がかりから真相を探る探偵ものワクワク感がありつつ、愛憎劇の様相を見せる「僕に才能はありますか」。どちらの話も特徴を一言では表せない多様性のある話で、最後まで目が離せない。
なんだかんだで今回も面白かった。キャラクターは嫌いなタイプが多くイライラすることが多いのに、繰り広げられる人間ドラマは魅力的で最後まで面白く読めてしまう不思議な作品。