いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「君がいた美しい世界と、君のいない美しい世界のこと」神田夏生(電撃文庫)

高校を卒業したばかりの春休み。最愛の人である三日月緋花里を病で亡くし、失意に沈む僕のもとに一通の手紙が届く。
「世界を『リセット』して、もう一度あたしに会いに来い」
彼女らしい突拍子もない内容を訝しみながらも、僕は一縷の望みを懸け彼女を取り戻す旅に出た。
運命を『リセット』するためには世界で一番美しいものを探し出さなければならないという。
猫のかぶりものをした怪しげな男・クレセントを道連れに、彼女との想い出の場所をめぐる旅路の果て、たどり着いた『リセット』の真実とは――?
ワガママで破天荒な彼女と僕の最高に幸せで甘苦い恋の顛末は、あなたの目で確かめてほしい。


高校卒業直前に最愛の彼女を亡くした少年が、彼女が遺した手紙に書かれた『リセット』という不思議なチカラを求めて、示された住所に向かう――遺した人の想いと遺された人のその後を考える青春ラブストーリー。
ストーリーは『リセット』の条件を探すという名目で、彼女との思い出の場所に出向く彼の旅が軸。思い出は甘く、現実は痛々しくを繰り返しながら、彼女との思い出が語られていく。
彼女の死によって思考停止していた彼が、当時の記憶を思い起こしながら一番大事なことに気付いていく過程が、切なくも優しい良い話。でも、個人的な一押しは彼女のキャラクター。
手紙冒頭の強烈な一言で速攻でやられてしまった。独特の感性を持ち、唯我独尊な俺様気質。なのにその言い分に嫌な気がしないさっぱりした性格で、正義感は人一倍。それでいてデレるとめっちゃ可愛い。
と、全体の九割は楽しんで読んだのだけど、、、
このラストはどうだろう。
ありきたりで拍子抜けしたのもあるが、それ以上にそこまで積み上げられてきた彼女の人物像が突然ブレた気がして大変気に入らない。
帯の文句「感涙必死のラスト5ページ」に期待しすぎたかな。泣く準備は出来ていたのになあ。