いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「マッド・バレット・アンダーグラウンド」野宮有(電撃文庫)

「ねえ、ラルフ。ところで今日の仕事、殺しの許可は?」
「政府公認。愛と正義の為に、どうぞ連中を皆殺しにしてください、だとさ」
おっと、勘違いするなよ? 俺とリザは、殺人もクスリも黙認してくれる寛容な犯罪街イレッダでご依頼主様のために、クズどもをぶっ殺す善良な賞金稼ぎだ。
まぁ、ご依頼主様が良い奴か悪い奴かは関係ないがな。何より大切なのは金だ。
そんな俺たちに与えられたのは、少女を捕らえろというちっぽけな仕事。だがそれも、悪魔の異能力者《銀使い》の襲撃で、狂気に満ちた《愉快な誘拐劇》に変わってしまったわけだが――。
第25回電撃小説大賞で物議を醸した最大の問題作、《選考委員奨励賞》受賞。


秩序無し治安劣悪な街の裏社会で、悪魔の力を使って戦う《銀使い》が殺し合うバトルアクション。
これは良い中二感。
異能の力が幅を利かす無法地帯で、相手は強大なマフィアという燃えるシチュエーション。それに加えて、酒も煙草もO.K.な高めの年齢設定。登場人物たちの過去は目を背けたくなるほどベーリーハード。Fワードも度々入ってくる口汚い会話と、ラノベとしてはかなり思い切ってハードボイルドに振り切った作品だった。
しかし、この手の作品にありがちなのだけど、出てくる単語が独特な上に説明過多なので読みにくい。特にアクションシーンがメインの作品なのに、その説明過多でスピード感が削がれてしまっているのが痛い。
あと自分の生き方に悩む主人公の葛藤を描くストーリーは、大筋ではよかった思うのだけど、心理描写は直接的で上手いとは言えず、しかも主人公が過去を語りだしたあたりからコレジャナイ感が。とりあえずヒーローの不幸自慢は単純にカッコ悪いぞ。
と、段々とダメ出しばかりになってしまっているのは、これといって琴線に触れるところがなかったから。新人賞作品ではどこか光るものを見つけたい自分としては、合わない作品だった。
ダークな雰囲気は好きだったんだけどな。