いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「妹さえいればいい。12」平坂読(ガガガ文庫)

主人公になることを諦め、淡々と機械のように小説を書き続ける羽島伊月。一方、可児那由多は小説を書くことをやめ、部屋に引きこもってひたすらゲームに没頭するようになってしまう。そんな二人を、不破春斗や白川京はどうにか立ち直らせようとするのだが……。主人公達が立ち止まっている間にも、時間は容赦なく流れ、世界は絶えず動き続ける。大野アシュリーや木曽撫子、羽島家にも大きな出来事が訪れて――。大人気青春ラブコメ群像劇、待望の第12弾!!交錯する人間模様の行く先を、刮目して見届けよ!!


今回はバリバリネタバレです(←いつもだ)

前巻別れのラストから、シリアス必至の12巻。
二人して別れたら髪切るって仲良しかよ! というのが表紙を見た時の感想で、そのおかげか初めから割と安心して読めた。
それでも、こうやってはっきりと形になった「幸せ」を読むのは一味違う。しかも実に彼女らしい答えと彼らしいやり方で。例え二次元のキャラクターであっても思い入れのある誰かの幸せに触れられるのは、やっぱり良いものだ。
そんなわけで、やっと伊月が本来の姿に戻ってくる、復活と復縁の物語。
伊月復活のきっかけが「妹」だったのは、意外でもあり伊月らしくもあり。満たされてしまった妹欲に続き、家族愛まで満たされてしまったらどうなってしまうのかと思っていたが、そうか、それは本物だけど両親のものか。
それはそうと伊月くん、計算して職人的に書けちゃうのかよ。それが出来ない作家がどれだけいると。本当に天才(肌)だったのね。
那由多の方は京の頑張りを褒めたい。作中では誰も褒めてくれないので。
本人は甘やかしてばかりでダメダメだと言い、確かに復活の直接的なきっかけは同じクリエイターの蚕の言葉だったけれど、京が思う存分甘やかして、反発する元気と逃げ場を作ってくれたからこそだと思うんだ。
と、当たり前のように二人がメインだったけれどそこは群像劇、他のキャラのエピソードも。
大人二人が作者の結婚欲の犠牲になったいい感じでくっ付いたり、千尋ちゃんが自爆するネタキャラ化してしまって悲しくなったり、大天使レイヤー撫子誕生の予感に京GJ!だったり。
主人公とメインヒロインが元鞘に戻って残り2巻(予定)。みんなの幸せを願うのはもちろんだけど、京が笑って終われるのかがこの先最大の関心事。