「ところでコレ、ホントに出版するの?」
編集長の鋭い眼光とその言葉に、相当編集の命は風前の灯火であった。
本作は『賢者にして勇者である最強の称号《賢勇者》を持つ男が、弟子(おっとり巨乳美少女)とともに社会の裏に隠れた悪を断罪する』という“ザ・今時のライトノベル作品”としてスタートした。
だが作家からあがってきた原稿は、全裸のイケメン(賢勇者)をはじめ、筆舌に尽くしがたい変態仲間たちが織りなすナンセンスギャグギガ盛りの――いわば「なぜか堂々としている社会悪」的な何かであったのだ(ついでにヒロインの胸も削られていた)。
「だ、出版します!面白いですから!」
超言い訳っぽい担当の言葉は真実か!?
答えは――今、あなたの手の中にある。
必死の想いで賢勇者に弟子入りした無垢な女の子(貧乳)が穢されていく悲劇の物語。
初めは男の裸が見えただけで悲鳴を上げていた少女が、次々に出てくる変態達への叱責で疲弊し、度重なるコスプレの強要、AV出演未遂を経て、終いには自ら全裸になる姿には涙を禁じ得ない。
ゴメンナサイ。嘘で……はないな、事実関係は。
あまりに馬鹿馬鹿しい内容に、ボケずにはいられなくなるのよ。
本当の内容は、
エンタメ業界の方々に毒をばら撒きながら、下ネタを筆頭に各種あらゆるネタをぎっしりずっしり詰め込んだギャグファンタジー。なんじゃこりゃ?なあらすじから、表紙を一枚めくると全裸の男と快〇天の表紙(17年8月号 なぽた先生の表紙が目印!……サヨナちゃんの手デカくね?)が飛び込んでくることで、おおよそを察することが出来てしまう怪作。いや壊作。
一応短編連作形式で、ボケ倒す賢勇者と依頼人(ゲストキャラ)にサヨナ嬢がツッコむ会話劇が軸。そのツッコミに恥じらいがなくなっていく過程が最高に面白い物悲しいところを除くと、本気で「ひどい」以外に形容詞が見当たらない。
分からないネタや、過ぎた下ネタが出てきて、ちょっとどうかと思うところもあるが、まあ笑ってしまった時点で負けだよなあ。ええ、笑いましたとも、くそう。異世界転生主人公に対する並々ならぬ悪意と敵意がほとばしる本編に、前作絵師を持ち上げる体で堂々とエロ本を語る終盤、そして自虐ネタで締める第四話がお気に入り。
続編は色々な意味で厳しそうなので、せめてマスコットキャラクターのグッズ化を希望。え?無理?