いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「小説 天気の子」新海誠(角川文庫)

高校1年の夏、帆高は離島から家出し、東京にやってきた。連日降り続ける雨の中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は不思議な能力を持つ少女・陽菜に出会う。「ねぇ、今から晴れるよ」。それは祈るだけで、空を晴れに出来る力だった――。天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄される少年と少女が自らの生き方を「選択」する物語。
長編アニメーション映画『天気の子』の、新海誠監督自身が執筆した原作小説。


ああ新海作品だなあ、と。
ボーイミーツガール。自分が生きる範囲の世界に対する閉塞感。大人になる過程の通過儀礼。そして映像美(おそらく劇場では雲と雨(水)の描写が映える映像美が繰り広げられているのだと、容易に想像できる描写多数)。そこに異常気象が続く地球環境への警鐘も加わって、メッセージ性の高い作品になっていた。
どちらかと言えばという話だが、
君の名は。」はボーイミーツガールを魅せる為の演出に力を入れていたのに対して、「天気の子」は自身が伝えたいメッセージに力を入れていた、という印象を受けた。
例えば、男の子の主人公。
男子高校生らしい若さを見せつつも基本は自分で考えて行動する瀧と、高1にしては精神年齢が幼い、よく言えばピュアな少年の本作の主人公・穂高
ボーイミーツガールで映えるナイト役を任すのなら間違いなく瀧くんで、穂高はあまりに情けなく頼りない。でも、思春期に感じる閉塞感や、「現実を知る」「諦め」「達観」などの大人になれば嫌でも受け入れなければならない現実は、島という閉鎖された空間の高校生で純粋な彼だからこそ、伝えたいものが強調されていたように思う。また、感化さらてバカをする大人たちを動かすパワーを持っているのも穂高の方だ。
どちらが「らしい」かと言われれば、間違いなく「天気の子」で、どちらが流行りそうかと言われれば「君の名は。」かな、エンタメ性が高いのは後者だと思うので。自分の好みは……雲のむこう、約束の場所」(おい 主人公の好み差で「君の名は。」。