いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ひきこまり吸血姫の悶々」小林湖底(GA文庫)

「……ふぇ? な、なに?」
引きこもりの少女テラコマリこと「コマリ」が目覚めると、 なんと帝国の将軍に大抜擢されていた! しかもコマリが率いるのは、下克上が横行する血なまぐさい荒くれ部隊。
名門吸血鬼の家系に生まれながら、血が嫌いなせいで 「運動神経ダメ」 「背が小さい」 「魔法が使えない」 と三拍子そろったコマリ。 途方に暮れる彼女に、腹心(となってくれるはず)のメイドのヴィルが言った。
「お任せください。必ずや部下どもを勘違いさせてみせましょう! 」
はったりと幸運を頼りに快進撃するコマリの姿を描いたコミカルファンタジー! 引きこもりだけど、コマリは「やればできる子」!?

第11回GA文庫大賞優秀賞受賞作


引き篭もりの大貴族の娘が、将軍職に就かされて七転八倒大騒ぎする物語。
ダメダメなようでいて、実は正義感が強くて情に厚い主人公・コマリの魅力に、引き篭もりのコマリが状況に流されながらとはいえ、なんとか取り繕おうと努力する姿=成長を描く物語であること。主人公や味方のキャラクターだけでなく、敵側のキャラクターにもドラマがあるしっかりした作り。コメディとシリアスの線引きができていて話にメリハリがあり、そして何より読みやすい。ラノベとしてのツボは抑えられている、優秀賞より上の賞でも良さそうな作品。
と、完成度の面では目を見張るものがあるのだが、趣味・好みに合うかどうかはまた別の話で。
コメディパートのテンションと笑いのツボがまるで合わないかった。おかげでコメディ主体の前半は正直しんどかった。
シリアスメインになる後半は落ち着いて読めたのだけど、肝心の最終局面がどうにも腑に落ちない。
自分より明らかに強い相手に単騎かつ無策で突っ込む主人公の行動が不自然。結果的には本人は無自覚な特殊能力で解決はするが、あまりにも無茶で無謀な行動に、能力があることを知っている書き手側の都合に合わせた行動のように思えてしまってモヤっとする。ハッピーエンドにはそれなりの理由や過程を求めてしまう自分には、このラストは合わなかった。
結論、合わないものは合わない。申し訳ない。