いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「金沢古妖具屋くらがり堂」峰守ひろかず(ポプラ文庫ピュアフル)

金沢に転校してきた高校1年生の葛城汀一。街を散策しているときに古道具屋の店先にあった壺を壊してしまい、そこでアルバイトすることに。……実はこの店は、妖怪たちの道具“妖具”を扱う店だった! 主をはじめ、そこで働くクラスメートの美男子・時雨も妖怪で、人間たちにまじって暮らしているという。様々な妖怪や妖具と接するうちに、最初は汀一を邪険に扱っていた時雨とも次第に打ち解けていくが……。お人好し転校生×クールな美形妖怪コンビが古都を舞台に大活躍!


金沢という街は、作家先生方を駆り立てる何かがあるのだろうか。
最近よく金沢が舞台の作品に当たっているのだけど、どの作品も街並みの描写が濃くて、なんとかして街の雰囲気を伝えたいという意気込みが感じられる作品が多い。
本作も例にもれず、古い路地や坂の街並みと曇天と雨の描写が濃く、静かで落ち着いた雰囲気と全体的に灰色がかった色彩が思い浮かんだ。金沢は一度行ったことがあるけど、小学生の時の家族旅行だから記憶が曖昧(^^; 今行ったら全く違う風景に見えるんだろうな。
さて、そんな情緒溢れる金沢を舞台に繰り広げられるのは、男の子の友情の物語。
引っ越し転校を繰り返している所為で、上辺だけの友達付き合いは上手くても本心を語り合えるような親友は皆無の汀一(人間)と、物静かな性格に加え、人と妖怪は分かり合えないと壁を作っている時雨(唐笠小蔵)。人間関係が不器用な子同士の友情はハラハラを通り越してヒヤヒヤの連続。でも、どこぞのカエルじゃないけれど、文字通り「泣いて笑って喧嘩して」な二人に青春を強く感じる。特に時雨はクールでドライな第一印象とは裏腹に、年相応の失敗は多いし台詞は臭いしで、年頃の男の子の可愛さが詰まっている(おっさん並感
そういえば、妖怪作家の峰守先生らしく妖怪がメインをはる物語ではあるけれど、あまり妖怪・怪異を感じない物語だったな。でも、大好物の青春が濃く感じられる物語で満足。