いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「紙屋ふじさき記念館 麻の葉のカード」ほしおさなえ(角川文庫)

百花は叔母に誘われて行った「紙こもの市」で紙の世界に魅了される。会場で紹介されたイケメンだが仏頂面の一成が、大手企業「藤崎産業」の一族でその記念館の館長と知るが、全くそりが合わない。しかし百花が作ったカードや紙小箱を一成の祖母薫子が気に入り、誘われて記念館のバイトをすることに。初めは素っ気なかった一成との関係も、ある出来事で変わっていく。かわいくて優しい「紙小物」に、心もいやされる物語。


新鋭作家の小物を扱う店を営む叔母に連れられて「紙こもの市」に行った女子大生が、記念館管理の閑職に回された製紙会社の御曹司と出会うことから始まる、「紙」をテーマにした物語。
工作好きの童心をくすぐり創作意欲を駆り立てるお話だった。
和紙を筆頭に見た目や質感だけでなく、歴史に素材に作り方まで事細かな紙の説明が入るので、ものを想像しやすいのが一つ。工作好きの可愛いもの好きで、暇があれば手に入れた紙で何かしら小物を作っている主人公だったのがもう一つ。しかも彼女、誰かと居るとおどおどしているのに、何かを作っている時は堂々としていて楽しそうなものだから、余計に感化されてしまう。
話のメインとしては、将来に漠然とした不安を感じている引っ込み思案の女子大生(2年)百花と、紙の知識は人一倍でも性格が子供なお坊ちゃん一成の成長の物語。
百花は大人の仕事に関わることで将来へのビジョンを探り、一成は百花やお客の意見を取り入れて記念館の改善を図り始めたところ。百花はまだ自分に自信がないままだし、一成は聞く耳を持ち始めた段階、二人の関係もただの知人からやっと仕事仲間として認識したところと、まだまだこれからという感じ。
シリーズものの1巻なのだろう、二人の成長や関係の変化など今後が楽しみなる内容だった。これが単発だとしたら変化が微かで物足りない。