いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ふしぎ荘で夕食を ~思い出のオムライスをもう一度~」村谷由香里(メディアワークス文庫)

平凡な大学生の俺、七瀬浩太が暮らす『深山荘』は家賃四万五千円で夕食付き。大家さんの娘で、俺の片思いの相手・夏乃子さんが毎日夕食を作ってくれる。幽体離脱が特技だったり、神様の使いだったり、住人は変わり者だけど、みんな彼女の夕食が大好きだ。
でも、夏乃子さんを捨て失踪した母親のアルバムが見つかったことがきっかけで、彼女にとある“異変”が起きてしまい……。
沢山の幸せをくれた大切な人のために、俺は何ができるんだろう。


おんぼろシェアハウス『深山荘』を舞台にしたハートフルストーリー第2弾。
ペットとの死別を受け入れられない小学生、失踪した母親との思い出に揺れ動く女性と、2巻も家族愛をテーマにした物語。どちらもよくある悩みではあるが、それが深山荘で起こる“ちょっと不思議”でドラマチックになっている。
……というストーリーはごく普通なのでいいとして(ひどい言い様
本作のメインデッシュは深山荘を彩る夕食たち。
2巻も変わらず強力な飯テロ力だった。生姜焼きにメンチカツにオムライス、オーソドックスで子供受けするメニューばかりなのに、どうしてこうも胃袋を刺激してくるのか。味・触感・香り等の料理そのものの描写が丁寧なのはもちろんだけど、その前の料理工程から丁寧で、すでにそこから胃袋をじっくり攻められている気がする。
それに加えて深山荘の食卓の雰囲気が良い。舌鼓を打つ住人達に褒められて喜ぶ夏乃子さん、その日の出来事を話す家族然とした会話。明るく和気あいあいとした彼らの食卓風景も一つのスパイスになっている。
今回も夜読むには危険な書物だった。御馳走さまでした。