いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「オーバーライト2 ――クリスマス・ウォーズの炎」池田明季哉(電撃文庫)

ブーディシアやグラフィティ・クルーたちとの出会いによって音楽活動を再開したヨシ。そんな彼の元にかつてのバンド仲間、ボーカルのネリナが現れる!
「ヨシの音楽には、魂がない」――ヨシの音楽に迷いを生じさせ、日本を離れる原因となった歌姫の突然の来訪。気まぐれな態度でヨシを惑わす少女の真意は?
一方、クリスマス間近の街ではグラフィティを否定するミュージシャンの宣戦布告をきっかけにグラフィティ排斥の動きが激化!
〈Z〉を名乗る謎の人物によって街中のグラフィティが上書きされてしまう!
傷つけられたブーディシアのグラフィティ、立ち上がったララ率いる〈女王熊の復讐〉。ブリストルの未来、そしてヨシをめぐる三角関係の行方は?


トラウマを乗り越え音楽活動を再開したヨシの元へ、トラウマの原因となった女性ボーカリスト・ネリナが訪れる第2巻。グラフィティの街ブリストルを舞台にした音楽とグラフィティの《戦争》が勃発する。
1巻はグラフィティの持つ芸術性と犯罪性の二面を見せる物語で、若者たちvs体制という分かりやすく主人公側に肩入れしやすい構図になっていたのに対し、今度は若者vs若者。若者たちが自分の中の正義を信じ、主義主張がバチバチとせめぎ合うことで、青春感がグッとアップしている。
また、メインのヨシやブーディシアだけでなく他の登場人物たちの背景もしっかり書かれているので、直接対決のクリスマスイベントからの展開は熱いものになっている。
ただ、個人的にネリナの存在がネック。
こういう傍若無人な人、自分が最も嫌いなタイプの人間。どんなに裏で努力して苦汁を舐めていることを知っても、普段の行いがこれではイラつかないのは無理。それでもその盛大に稼いでいったヘイトをメインヒロインが解消していってくれたらよかったのだけど……。
ブーディシアさん、それはないでしょう。普段の格好良さはどこいった?「あたしのものになれ!」くらい言ってくれるものだと。女狐で溜まったフラストレーションはそんなお子ちゃまな願いじゃ拭いきれないよ。
芸術にかける青春ストーリーという観点ではとても面白かった。しかし、あらすじで言うところの「三角関係の行方は――?」はもの凄くモヤっと。