39番浮遊島の〈最後の獣〉を退け、浮遊大陸群の滅びに猶予を勝ち取ったあの日から、五年。
「オルランドリ商会第四倉庫に、『鏃(やじり)』の提供を要請する」
未だ2番浮遊島に神々を囚える〈最後の獣〉を排除するほか、世界を守る術はなく――最後の決戦を前に、妖精兵たちはつかの間の日常を過ごす。
「アルミタはさ、今でも、ティアット先輩みたいになりたい?」
かつて憧れていた景色に手が届く今、幼き妖精兵に訪れる葛藤――そして迫る決意のとき。
浮遊大陸群の命運をかける最終決戦前の束の間の平穏を描く9巻。
英雄になってしまったティアットの今が語られる前半と、元年少組のアルミタとユーディアのこれからを語る後半。それとその間に挟まるノフトの閑話の2.5部構成。前巻も繋ぎの回っぽい位置づけの話だったが、今回はその補足といったところ。
ティアットは変わらないな。あんなに悲しい経験をたくさんしてきても、自分の立ち位置が劇的に変わってしまっても、前向きな考え方とちょっと残念な恋愛脳がそのまんま。このシリーズにあって彼女の明るさは本当に救いだ。
ただ、この巻の話の構成が、クトリに憧れたティアットから、ティアットに憧れるアルミタへバトンタッチされているようにも取れるので、このシリーズの容赦のなさを考えると一抹の不安が。
あと非常に興味深いのがユーディアが適合した遺跡兵装プロディトル。あの人の武器がこんなところで登場するとは。彼女も気苦労を背負い込むことになるのだろうか。頑張れ(気の毒に)。なんにせよ、何かのキーアイテムになりそうで、ユーディアの動きから目が離せない。
次こそ〈最後の獣〉戦か。エピローグで示されたそれは、ハッピーエンドに繋がる道筋か、それとも……。