いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「となりの彼女と夜ふかしごはん ~腹ペコJDとお疲れサラリーマンの半同棲生活~」猿渡かざみ(電撃文庫)

大手スーパーの文具部門で新任マネージャーとなった俺・筆塚ヒロトは、仕事漬けの毎日にすっかり憔悴しきっていた。そんな俺の唯一の楽しみは、深夜帰宅後につまみを作って酒を飲むことだけだった、んだけど……いつの間にか、隣に住む腹ペコ女子・朝日さんと賑やかな半同棲生活をすることになってました。
「し、深夜に揚げ物は犯罪なんですよ!」
「今夜こそ誘惑に負けませんからね…!」
「こんなに美味しいなんて優勝ですぅ…」
優勝――それは大切な人と美味い料理で食卓を囲う瞬間のことを言う、らしい。
腹ペコ女子があなたの暮らしを彩る深夜の食卓ラブコメ、召し上がれ!


意に沿わない部署替えと嫌味な上司のパワハラに悩むサラリーマンと、ある秘密を抱えるちょっと残念な女子大生によるお隣さんラブコメ
サブタイトルは半同棲生活とあるが、ただの飲み友達の健全な関係性。そうこれは初めての飲み友達を得た若い二人の物語である。
ずっと一人飲みだったサラリーマン・筆塚は年下の危なっかしい女性という存在と初めの飲み友達のにおっかなびっくり。対するJ女子大生朝日もハタチになったばかりで慣れないお酒でブレーキのかけ方を知らない。そんな初々しい二人が、愚痴を言い合ったり、思いがけない含蓄のある言葉をもらったり、嬉しい言葉をもらったりと、偶然の出会いが二人の癒しや救いになっていく様子にほっこりする。
また、その出会いから好転していく筆塚の仕事の様子も描かれるので、元気の出るお仕事小説になっている。
ただ、タイトルやあらすじから期待していた飯テロの方がイマイチ。
筆塚が朝日を深夜のつまみの誘惑に堕とす過程を楽しむ「コメディとしての面白さ」に重きを置いているようで、焦らしたり煽ったりの食べる前の表現は濃いのだが、肝心の料理の感想がテンプレ食レポで茶化す感じになっていたり、そもそも食べている時の描写が少なかったりで食欲は刺激されなかった。不味いビールを美味しくないと言いながら飲んでいるのも飯テロ的には大きなマイナス点。
というわけで、悩める若手社会人たちに勇気と元気を与えるお仕事小説としては良かった。飯テロ小説としては期待外れ。