いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった」雪仁(電撃文庫)

「こちらのお弁当は、どうして半額なのかと思いまして」
一人暮らし二年目の高校生、片桐夏臣の隣室に黒髪碧眼の美少女が引っ越してきた。その少女、ユイは本物の貴族令嬢らしく、学校でのそっけない反応から付いたあだ名は「クーデレラ」。他人を頼ろうとしないユイだが、実はかなり世間知らずなところがあるのを知った夏臣は、彼女を手助けしていくことを決意する。
「今日の晩御飯は……鶏のからあげ?」
「鶏肉が安かったからな」
「ん、夏臣のからあげ大好きだからすっごく楽しみ」
お隣同士の立場から、甘々でじれったくなるような関係への日々が始まる――


ある事情で日本に留学してきたハーフの英国人女子ユイに隣人の夏臣が救いの手を差しことから始まる、クラスの席もアパートの部屋もお隣さんな、真・お隣さんラブストーリー。

かあー、甘ずっぺえなぁおい!
猫カフェの定員さんも露店でアクセサリ売ってた人も、きっとそう思って接客していたに違いない。
良かった。何が良かったかって、二人の性格が。
夏臣とユイ、二人そろって日々の生活に対しても男女交際に関しても真摯で真面目。そのおかげで、清純でピュアな恋の始まりを読むことが出来た。どちらかに下心が見えたらこの初々しさは出なかったに違いない。仲のいいことをクラスでは黙っている、というよくある状況を、気持ちの面から考えて理由を付けるなんて面倒なことを真面目にやる誠実さが好ましい。
そこに、ユイの心の傷が少しずつ癒されていくエピソードが合わさって、素直な気持ちで見守りたくなるカップルになっていた。教室では他人を拒絶する彼女が彼の前だけ笑顔になる特別感、良いよね。その笑顔が自然になっていく様子を段階を踏んで堪能できるのが素晴らしい。
シチュエーションも起こるイベントもベタだったけれど、その分奇をてらわず丁寧に紡がれた物語、という印象。それぞれのキャラクターがどうこうというより、二人セットで可愛いカップルといった感じ。
ところで、作中で合鍵は渡してないのですが、これはタイトル回収まで続くと思っていいんですかね?