いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「かくりよの宿飯 十一 あやかしお宿の十二ヶ月。」友麻碧(富士見L文庫)

隠世をめぐる激動の日々を乗り越え、少し時が流れたころ。あやかしお宿「天神屋」の大旦那に嫁入りした葵は、大女将見習いとなり活躍する毎日を送っていた。
お仕事のかたわらで、かつて祖父が隠したらしいお宝を探したり、手鞠河童のチビは旅に出ていたり、ライバルお宿「折尾屋」とコラボをしたり、大旦那が現世に出張したり――。相変わらずの何気ない日々が、少しずつ変わりながら続いていく。そして桜の季節がまた訪れようとしていた。
隠世で生きる葵と仲間たちの営み。季節がめぐる十二ヶ月の物語。


一月一編で一年間、全十二話+おまけで語られる「かくりよの宿飯」後日談短編集。
葵が綴った日記帳という体のプロローグでありながら、他のキャラの視点の話がそれなりにあるが、細かいことは気にしてはいけないw
借金問題やヒロイン(大旦那)救出など いつも忙しなく動いていた葵が、隠世での暮らしをのんびり堪能している様子が読めて嬉しい一冊。諸々の憂いがなくなって、よりパワフルで相変わらず料理バカな葵に元気をもらえる気がする。
と言いつつ、お気に入りは唯一切ない話の第十二話だったりするのだけど。大切な人の中でも慕っている人との別れは、自分の中の支えがなくなったようで辛いもの。でも、それを乗り越えるだけの心の余裕と周りの支えのがあることで、葵の今が充実しているのがよくわかるのが良かった。
あと印象的だった、というか上げて落とされたのは第七話から第九話の並び。
儚い美人さんを葵が救って、その人が知っている誰かと縁談を受けるらしい。その直後に銀次視点の話。これは誰だって期待するでしょう。それが天狗かい。天狗とか迷惑をかけられたイメージしかないぞ。どーでもええわ(暴言)。シリーズ屈指の報われないキャラ銀次の春はいずこ……。
お料理の方でそそられたのは、各種炊き込みご飯。アスパラご飯美味しそうだけど、緑に染まったりしないんだろうか。あとは塩パン。野菜詰めるのいいな。今度買ってきてやってみよ。
久しぶり葵やあやかしたちに会えて、しかも幸せいっぱいで満足な一冊だった。