いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。5」しめさば(角川スニーカー文庫)

半年以上一緒に暮らしたアパートを後にして、吉田と沙優は共に北海道へ向かう。「家に帰る」という目標の達成は、同時に少しだけ先延ばしにした2人の別れがやってくるということ。その前に、沙優は「高校に寄って欲しい」と呟いた。彼女が普通の女子高生ではいられなくなった、きっかけとなる事件の現場。家出した遠くに離れた場所に逃げるまで、目を背けてきたことにようやく立ち向かおうとしている。沙優の背中を後押しするため、吉田は夜の学校の階段を上って……。
「私、お髭のサラリーマンの吉田さんに出会えて良かった」
サラリーマンと家出女子高生の同居ラブコメディ、堂々の完結!


家出JKと独身サラリーマンの奇妙な同居生活ラブストーリー、完結編。
VS毒母親。いわゆるラスボス戦。半年以上家出していた娘に、本人の心配よりも自分の世間体が大事だと叫び引っ叩く母親は、どんな事情があろうとも毒以外の何ものでもないよね。
そんなわけで北海道編は、問題ある家族の問題に首を突っ込んだ時の、割とリアルな状況を見せられた感じ。双方の言い分に道理が通ってなくて支離滅裂な辺りが特に。それでも、ラノベという媒体なのと沙優の荻原家は裕福なので、本物の修羅場と比べればかなりマイルドだとは思うけど。
でも、それにしたって吉田のやり方は流石に予想外。そこで怒るのではなく、頭を下げるのが吉田らしさなんだろうなあ。
結局、吉田とはいい人だったのか、悪い人だったのか。
悪い人だとは思わないが、間違っても正義の人ではない。善く言えば自分の正しいと思ったことに正直で直向きな人、かな。
まあ、どっちだっていいか。沙優にとっていい人であったのならば、それでいいのだから。
これは不幸と不運に苛まれ自暴自棄になっていた少女が、偶然にして奇跡の出会いを掴む物語。沙優が生きる希望を持てて、笑顔で終われるラストで大満足。
それに、吉田の中で沙優がとても大きな存在になっていたこと、沙優があの生活で何かを刻めていたことが嬉しい。それが分かるエピローグ前のシーンが一番好き。
そして迎えたエピローグは笑顔の沙優で大団円、最高の読後感……と言いたかったんだけど、奴がね。
数年経っても未だにキープ状態のあの女上司に怒り心頭ですよ。あの女マジで屑だな。
あ、吉田の明確に悪い点があった。好みの女のセンスが悪い。それに見る目もない。
ちゃんと“責任取って”沙優を幸せにしてくださいね。