いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ロクでなし魔術講師と禁忌教典19」羊太郎(富士見ファンタジア文庫)

失踪したセリカを追いかけ、グレンとシスティーナがたどり着いた先。そこは「メルガリウスの魔法使い」にて描かれた聖暦前4000年の世界。現代よりも、はるかに強力な古代魔術が跋扈し、魔王が君臨する地獄であった。魔王に挑むセリカ。魔王の人知を超えた力に、膝をつく人々。そんな光景を前に、グレンは叫ぶ。
「俺はセリカの弟子だ! この世界を救うために、ここに来たんだ! 悪逆非道の魔王を倒すためにッッ!」
その声はやがて人々に届く。民衆が立ち上がり、グレンをセリカが再び出会うとき、本当の伝説の物語が紡がれる。
正義の魔法使いと、その弟子の、世界を救う戦いが始まる!


ついにセリカの秘密、彼女が歩んできた壮絶な人生が語られる第19巻。
言うなれば大伏線回収祭。
喋れないことだらけのナムルス。空に浮かぶ天空城の謎と童話『メルガリウスの魔法使い』の存在。魔王関係の秘密。そしてセリカの過去。これまで思わせぶりに濁してきたあれやこれやがおおよそ詳らかになる、この物語において大変重要な巻だった。
前回の感想で風呂敷を広げ過ぎたとか言ってしまって大変申し訳ない。まだ最終決戦は残っているので全部ではないが、広げ過ぎと思われた伏線が綺麗に回収されていた。
そんなシリーズとしての大事な話をしながらも、グレンとセリカの家族の物語だった。
飛んできた世界がどんな厳しくても、目の前の敵がどんなに強大でも、セリカを助けるの一点で困難を突破していくグレンの姿に、グレンがセリカを家族として、母として、どれだけ大切かを感じさせる。それこそ、情熱がほとばしり過ぎて臭いくらいに。
「助けて」。大変な時に家族が家族を頼るごく当たり前のこの一言。これを引き出すためにグレンは5800年余りも飛んできたかと思うと感慨も一入。その先のもう一声まで行けなかったのは、師として母としてのセリカの矜持か。
まあ、そのおかげで一緒に過去に来たシスティーナの存在が消えてしまったのだが。一人でパワーアップしてたけど、折角二人で来たのにほっとかれる白猫さんェ…。
ハイライトのVS魔王の魔法大戦に関しては、グレン先生が言いたいことを言ってくれていたので、その言葉をお借りしよう。
「おう、言ってる意味がよくわからんぞ!」
もう19巻だから、インフレして訳わからなくなってても仕方ないよね。
さあ現代に戻って魔王退治だ。今回のような必殺技重ね掛けは使えないが、どうするグレン。