いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「貴サークルは“救世主”に配置されました2」小田一文(GA文庫)

「実家に帰らせていただきます」
渾身の一冊を描き上げ、魔王復活を阻止することに成功したナイトとヒメ。しかしその反動からか、ナイトはスランプに陥ってしまう。進まないネームにやきもきするヒメ。
そんなとき、ナイトは同じ大学に通うソラフネを愛する“文芸先輩"と出会う。プロの小説家でもある彼女に乞われ、彼女の小説同人誌にイラストを寄稿することに。
ところが“文芸先輩"は、滅びの未来でヒメと対立していた“魔女"であった。彼女の依頼を受けるなど到底認められないヒメ。
果たしてスランプを脱し、再び想いを滾らせることはできるのか――同人誌に懸ける青春ファンタジー!


描くことが世界を救う!?な同人活動ライトノベル第2弾。
今回は冬コミで目標を達成し自分としても満足の作品を作り上げたことで燃え尽き症候群になってしまった主人公・ナイトの、苦悩と復活の物語。
スランプで書けない時にヒナちゃんの正しさと押しの強さは辛いわ。同人活動はどこまでいっても趣味の世界で仕事ではないから、やらなければならないという義務感や危機感が薄い。そこに正論を捲し立てられたら嫌味の一つも言いたくなる。まあこの作品だと世界の命運がかかっちゃってるんだけど。
そんな中登場したのが、プロ作家で呑兵衛で美人な大学の先輩。売れっ子作家でも同人では売れないという、シビアなリアルを突きつけられる可哀想な新キャラ。それでなくても弱っているのにナイトに容赦のない追い打ちを掛けなくても、と思ってしまう。
でも挫折が大きいかったからこそ、そこからの逆転劇の感動と熱量が上がる。
それぞれの「好き」と「情熱」が噛み合って、作品制作しているシーンは本当に熱かった。そして青春だった。これを味わえるからやめられなくなっちゃうんだろうなあ。
そんなわけで、同人活動では1巻かそれ以上の情熱と青春感を見せてくれたのだが、“救世主”の方は1巻以上に影が薄かった。
もう魔王の正体が分かっているから、彼女の満足度による不穏な空気くらいしか出せないのは解るけど。間章の存在意義が行方不明だ。
まあ本題(同人活動)が面白かったからいいか。
目標の壁サークルは遥か彼方だが、メンバーが増えて賑やかになった次回が楽しみ。女の戦いも始まる?