いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #11」枯野瑛(角川スニーカー文庫)

〈最後の獣〉が創り出した少年は、最期の選択を迫られる。今ここにある幸せを慈しみ、浮遊大陸群《レグル・エレ》を滅ぼすか――多くを奪う邪悪として、自分自身が滅ぼされるか。偽りの楽園は罅割れ、幸福のかけらも削れ行き、少年は自身の存在する意味を覚る。
「ぼくはちゃんと、あなたたちと戦います」
聖剣モウルネンを差し向けるティアットに、示す答えは。そして、崩れ行く世界は、その跡に何を残すのか。
明日を繋いだ妖精たちの第2部、終幕。


シリーズ最終巻。浮遊大陸群の行く末が掛かった妖精兵たちの最後の戦いが描かれる。
これ以外ない結末だと思うと同時に、納得のいかない部分も抱えている複雑な心境だ。
レプラカーンたち、それぞれの戦いには沁みるものがあった。
アルミタとユーディア、後輩たちの戦いには二人の切なる願いが乗せられていて切なく温かい。特にユーディアの持つ元ヴィレムの剣の発動条件が、ユーディアとそしてヴィレムの優しさを物語っていて、前シリーズと思い出と共に切なさが増す。
先輩たち三人は、パニバルとコロンは前回目立った分サポート役といった体だったが、ティアットは背負った希望に押しつぶされることない堂々たる立ち振る舞いに成長を、ちょっと抜けた思考ややり取りに彼女らしさを感じられて、これこそ主役、第二部はこの子の物語だったんだと実感した。
ただ、彼女たちの勝利が〈いずれ訪れる最後の獣〉の核として生まれた少年、モーントシャインの急成長と覚悟によって成り立っているのが、何とも言えない気分になる。物分かりの良すぎる子は見ていて切なくなるんだよ。それに根本的な問題は何も解決していないし。元々が滅びゆく世界の物語なのだから、当然の結末だと頭では理解しているし、その中では最大限のハッピーエンドだとも思っているのだけど。
それにしてもこのエピローグはズルい。直前まで大賢者や地神たちの思い出を語り、妖精兵たちの思い出を語り、失ったものは戻ってこなんだと何度も示した後にこのエピローグ。そりゃあ泣くよ。
厳しい世界と厳しい運命に翻弄されながらも、少女たちが刹那の命を燃やす力強く美しい物語だった。『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』1巻から七年、長い間お疲れ様でした。何度も泣ける物語をありがとうございました。
終幕と言いつつ、番外編とかスピンオフとかありそうだけどw