いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「迷探偵の条件1」日向夏(MF文庫J)

真丘家の男子は十八歳までに運命の女性に出会わなくてはならない。でないと、十八歳で必ず死ぬ。つまり本日、十七回目の誕生日を迎えた俺・真丘陸にはあと一年の猶予しかないということである。しかし、その残念な運命を回避するには厄介な体質が俺にはあった。しかも二つ。一つは女難体質で、この中に運命の相手がいても困るレベルでヤンデレばかり引き寄せてしまうこと。そしてもう一つは、超がつく探偵体質であること。それはもう、ちょっと出かけると事件に巻き込まれるような。
というわけで、今日もまた死体に出くわしたのだが……。もしかして、犯人が運命の人ってことはないよな?


18歳までに運命の女性と出会わないと死ぬ呪いにかけられた真丘家の男子・陸。女難体質と事件に巻き込まれる探偵体質を併せ持つ彼の平凡ではない高校生活を描く物語。
冒頭から諸々の設定を体質の一言で片づけていく力技を繰り出してきたので、それらを使って何をしてくれるのかと期待が膨らんだのだが、、、言い訳にしか使われていないような?
別に体質にしなくても女難でいいじゃない。ラノベ主人公なんて大体そうでしょ? 別に体質にしなくても事件に遭遇してもいいじゃない。小五郎のおっちゃんなんてどれだけ遭遇しているか。
それと、タイトルは迷探偵なのに、推理はしっかりしている。名探偵といって差し支えない。なまじ推理パートがちゃんとミステリしているばかりに、他が浮いているのだが。
それなのに推理だけして答え合わせをしてくれない話が半数あるのがどうにも気持ちが悪い。解決しても後味が悪いのはミステリの宿命だが、正解か不正解か分からずに後味が悪いのは意味が違う。解決編はミステリの醍醐味だろう。
また、女難=ヤンデレブコメの方も、主人公がほぼ女性恐怖症で女性とは距離を取っていてラブコメ展開になりようがなく、最後の犯人にしても自分に向かってきた女性じゃないしで、ラブコメ的な面白さはなく運命の女性を見つける云々は欠片も可能性がない。
とまあ、文句しか出てこないくらいには合わない作品だった。探偵ミステリを書きたかったのか、ヤンデレブコメを書きたかったのか。どっちつかずで何をしたいのかよくわからない。
表紙の子が内容の性格から考えて絶対しない表情をしている点も併せて、製作サイドで色々と噛み合っていない作品という印象が強い。作者の書きたいものと編集が書かせたいものが違って、絵師に発注した時とは別物が出来上がり、表紙はどうにもならなかった……というところまで邪推した。