いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「中学生の従妹と、海の見える喫茶店で。」ツカサ(MF文庫J)

東京にある美術大学に進学したものの、都会での生活で自らの限界を迎え「熱」を失っていた間宮宗助。大学3年の夏休みに、亡くなった親戚の葬儀のため都会から逃げるように海沿いの田舎町――七登町へと辿り着く。そこには、事故で両親を失い、天涯孤独の身となってしまった少女・九谷唯奈がいた。
「お父さんとお母さんの喫茶店はあたしが継ぐって決めてたの……あたしの夢を守ってよ、宗にぃ……!」
記憶よりも大きくなった中学生の従妹と出会い、かつて交わした約束を思い出した宗助。幼き頃の思い出が残る喫茶店で、唯奈とともにこの夏を過ごすことになり――大人と子供の恋が、今ここで動き出す。


両親の死後も喫茶店を存続させたい従妹の手伝いをしながら、自分を見つめ直す美大生の物語。
終わってしまったのに引きずっている初恋、厳しい現実が見えている夢をまだ追うのか諦めるのかの苦しい選択などで悩む主人公が、何事にも一生懸命な従妹を見て、理解ある幼馴染みの助けを借りて、自分の道を見つけていく青春もの。
田舎の海辺の喫茶店が舞台ということで、もっとほのぼのほんわかした作品を予想していたら、思いの外尖がった話が出てきてちょっとビックリ。
とりあえず一番の尖がりは主人公がホストなこと。
モテる主人公と脈ありヒロイン四名のギャルゲーチックなキャラクター配置は実にラノベらしいのだが、自己評価が低いのに何故かモテる主人公が多いラノベの中では、女性の扱いが上手で浮いたセリフを照れずに言える宗助は異彩を放っている。
もう一つは作品の雰囲気。
ままならないことへの怒りや焦り、罪悪感など、青春の楽しい面よりも青春の苦さを強く感じる作品になっていて、ほんわか作品を想像していたギャップもあるのか、纏う空気がやや刺々しい。まあ、この余裕のなさも若者らしさか。
想像していたものとかなり違っていたけど、青春小説としては悪くなかったんじゃないかと。
……と、なんだか歯切れの悪い感じなっているのは、内容が予想外だったことよりも、ピンとくるヒロインが居なかったのでイマイチ楽しめなかったことが大きいかな。
健気美少女従妹、強気でツンデレ気味な幼馴染み、元気で現金なスポーツ少女、小心あわあわ美少女バイト仲間と数はいたんだが。ままならないものです。