いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「豚のレバーは加熱しろ(6回目)」逆井卓馬(電撃文庫)

最凶の魔法使いを遂に打ち倒し、王都奪還に成功してハッピーエンド!……とは、当然ならなかった。
深世界との融合現象《超越臨界》によって引き起こされた混乱。崩壊寸前まで追い詰められた王朝の復興。そしてイェスマという理不尽。課題は山積みだ。
そんななか、イェスマ解放の鍵となる「最初の首輪」を探す俺たちの前に、不気味で不可解な連続殺人事件が立ちはだかる。新王シュラヴィスの依頼を受け、俺とジェスは事件解明を目指すことに。
「私がめいたんていになれば、結婚にも一歩近づきますね」
んん??? 何か誤解が生じている気が……だが、名探偵になろうという心意気は素晴らしい。よし、今回もブヒっと解決してやろうじゃないか。


イェスマたちを解放するために必要な「最初の首輪」の探索と、それを邪魔する連続殺人事件の真相を追う、ミステリ風味な第6巻。
ジェスたそがめいたんていに!という遊び心のあるあらすじだったので、逃避行の時のような緩さやラブコメ感があるのかとちょっと期待してしまったのだが、最初から最後までひたすらに重い“ド”シリアス回だった。
行く先々で人死にが沢山出ているサスペンス特有の息が詰まる感じと、魔法が不安定になってしまった世界で、いつ襲撃されるか分からない緊張感が合わさって、とにかく空気が重苦しい。ここまで重いと、時々挟まれる二人のおバカなやり取りが、空気読めてない感じになってしまうな。
さらに真実は時として残酷で物悲しい、そんなところまできちんとミステリしなくてもいいのにと思わずにはいられない後味の悪さまで完備。おまけに要所でジェスとの別れとヤンデレ化を匂わすフラグまで立てられていて、お先まで真っ暗という。おうふ。
このシリーズの売りの一つである、頭の切れる豚の活躍がいっぱい読めたのは良かったが、一番の楽しみはジェスたその可愛い姿であって、それが楽しめるような状況にないのがとても残念。
異世界は一触即発の終末ムードが漂い、現実世界もなにやらヤバげな状況のようで、次回どうなってしまうのか。てか、これで二回連続現実世界エピローグなんだが、今度こそ現実世界の話がある?