いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「犬飼いちゃんと猫飼い先生 ごしゅじんたちは両片想い」竹岡葉月(富士見L文庫)

僕、ダックスフントの“フンフン”。大好きな藍ちゃんには気になる人が居るの。相手はいかにも好青年ってかんじの人間のオス、鴨井。動物病院の待合室で毎週会う、いつもいじわるな白猫キャロルの下僕(かいぬし)なんだよ。
気にくわないけど、藍ちゃんの気持ちも応援したい。ただ僕は、鴨井が藍ちゃんと仲良くできない重大な秘密も知っているんだ……!
飼い主たちの関係は、顔見知りから友達へのステップアップもまだみたいで!? 可愛い犬猫たちに見守られるなか、年の差ふたりの間にライバルまで登場してーー?


真面目が取り柄の高3女子・三隅藍と三年目の高校生物教師・鴨井心晴(但し別の学校)。動物病院で出会った二人の恋の始まりを軸に、人と犬と猫が織りなす群像劇。
そう、群像劇なのだ。本作最大の特徴は犬視点、猫視点があること。
おバカで元気な藍の愛犬ダックスフンドのフンフンと、心晴の幼少期から一緒に育った気高き美老描キャロル。この二匹が人付き合いがあまり得意ではない人間二人の恋模様を、じれったく思いながらも応援し、時にトラブルを起こして無自覚に後押ししと、人間よりもペットたちが動く、ちょっと変わったラブコメディになっている。
というか、フンフンはそのおバカ加減がストレートに可愛いし、キャロルはずっと見守ってきた心晴への深い愛に素直に感動できるし、むしろこの二匹がメインなのでは?
ペットを飼った経験がないので、彼らの思考や行動がどの程度“飼い主あるある”なのか分からないが、妙な人間臭さが面白く、甘酸っぱいじれったさを共に味わう仲間として共感できた。人よりも犬猫視点が楽しい一冊だった。
人間二人の恋路は始まったばかりだけど、続きはあるのかな? 何せ動かない二人なので、フンフン孤軍奮闘記になりそうな予感。