いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「不可逆怪異をあなたと 床辻奇譚」古宮九時(電撃文庫)

大量の血だけを残して全校生徒が消失した『血汐事件』。その日遅刻して偶然にも難を逃れた青己蒼汰は、血の海となった教室で、彼にとっての唯一の肉親である妹・花乃の生首を発見する。だが、花乃は首だけの状態でなお生きていた。
花乃の身体はどこに隠されたのか。
この凄惨な事件は何故起きたのか。
借り受けた呪刀を携えて床辻市内のオカルトを追っていた蒼汰の前に、謎の少女・一妃が現れた。彼女は街の怪異から人々を匿う『迷い家』の主人だという。
そして少女は告げる。私が君の運命を変えてあげる、と。
――踏み出したら戻れない、怪異狩りの闘争がここに始まる。


彼方と此方が近くなってしまった日本。その中でも特に怪異現象が起きやすい床辻市。怪異が絡む事件に巻き込まれ、首だけになってしまった妹の身体を探す為、悪意ある怪異と立ち向かう兄の奮闘を描く物語。

コメディ要素のない怖めのオカルトでアクションをするラノベは一昔前ならいっぱいあったけど、最近はめっきり少なくなってしまったので、懐かしさを感じながら読んだ。
中でも主人公・蒼汰の無謀さと図太さに手に汗握りながら読むことになる、ギリギリの緊張感とスタイリッシュさを兼ね備えたアクションが秀逸。但し、冒頭の事件を筆頭に事件が起こるたびに血生臭くなるのが、血が苦手な自分としては大きなマイナス点。
なんて、可もあり不可もありで総じてそこそこ面白い、くらいのテンションで読んでいたら、最後のどんでん返しの連続でそこそこなんて感想は吹っ飛んでしまった。
ヒロインの一妃が初めから好感度マックスで全肯定なのがどうにも座りが悪くて好きになれない。なんて思っていたら、それ自体が伏線だったとは。なんて残酷な運命を用意しているんだ。やっぱ『Unnamed Memory』の作者だわ。作品のメインコンビに厳しいw その後の蒼汰が出す答えがさらに衝撃。色々な意味で「それでいいのか」と問いたい。
途中までは懐かしさを、最後は大きな驚きを。楽しい読書時間だった。