いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「彼女と彼の関係 ~平凡な早川さんと平凡な三浦くんの非凡な関係~」六つ花えいこ(富士見L文庫)

「誰でもいいから、彼女になってくれんもんかね」「本当に誰でもいい? 私でも?」他愛ない会話から、クリスマスまで期限つきで夏帆は拓海とお試し恋人になる。
放課後の帰り道や、休日のお出かけ。これまで彼氏のいなかった夏帆はじゃれあうように"恋人"の距離を楽しんでいたが、気づけば本気で拓海の誠実さに惹かれていた。でも片思いだからと気持ちを伝えられない夏帆。そんな時「早くこの期間終わらんかな」と拓海が二人の関係を終わらせたがっていることを知り……!?
特別書き下ろしストーリー「放課後」も収録。


地味で真面目な優等生タイプだけど天然失言が多い女子・早川さん。がたいが良くて、イケメンな友人が身近にいるせいもあり誠実だけどモテない男子・三浦くん。彼氏彼女が欲しかった目立たないタイプの二人が、お試しで付き合っていく間にお互いを好きになっていく、男女双方の心の移り変わりが丁寧に描かれたラブストーリー。
早川さんパートがめっちゃ良かった。
自分の作品を褒めてくれた「ちょっといいな」な男の子から、付き合ってみたら思いの外楽しくてテンションが上がっていく様子。ふとしたきっかけで本当に彼が好きなんだと自覚して、逆に今まで通り振る舞えなくなってギクシャクしていく様。心の変遷が本当に丁寧に描かれていて、どのシーンでもキュンキュンする。
一方、男子の三浦くんの方も丁寧に描かれてはいるのだが、彼氏ムーブが優しいというより女子に都合が良すぎる気がするのと、その動きと内心が微妙に噛み合ってない気がして、こちらはやや強めの違和感。可哀想な当て馬・クラスメイトの松木くんの意地悪は、性格悪いなと思いつつも心情は理解は出来たのだけど、本命の三浦くんはどうもしっくりこない。女性作家が書いた男目線だからある程度は仕方がないかな。
それでも女の子が「恋がしたい」から「彼が好き」に変化する様子が可愛らしくて、少女漫画好きとしては十分に楽しめた一冊。