いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「義妹生活8」三河ごーすと(MF文庫J)

自分たちの関係を受け入れてくれるコミュニティを大切にする――そんな新たな価値観を知った悠太と沙季。順風満帆かに思えた二人の関係だが、春休みを過ぎ、三年生になった彼らにはまた大きな変化が訪れる。クラス替えにより同じ教室での生活が始まり、近づいてきた受験と未だ見えぬ将来設計に惑い――そしていつの間にか、二人が家族になってから一年が経とうとしていた。ここまでゆっくりと距離を近づけてきた二人は、近づきすぎてしまった自分たちの関係を見つめ直すために『すり合わせ』をするのだが――?
“兄妹”であり“恋人”でもある二人が理想の距離を模索する恋愛生活小説、第8弾。


進級して三年生になった新学期。クラス替えで同じクラスになった二人の様子を描く第8巻。
悠太は丸と、沙季は真綾と別のクラスになったことで、最大の理解者にして他者とのコミュニケーションを取るために緩衝材を失った二人は、新クラスで右往左往。そこに学校では他人のフリをする取り決めと受験生という立場、中間テストが重なって、物理的な距離は近くなったのに、お互いを意識するあまりに会話が減ってギクシャクし出す。
久しぶりに二人の面倒くさい性格の悪い面が顔を見せた話になった。本来なら喜ぶべき出来事のはずの「クラス替えで同じクラス」が困惑からの後退になってしまうのが、悠太と沙季らしいというかなんと言うか。同衾イベントがこんなにマイナス方向に作用する恋愛ものは他にないだろう。
一度悩みだすと一人で思考の迷路に迷い込んで悪い方に悪い方に考えるところが、二人ともそっくり。この巻をそのまま二人に読ませたくなる。そうしたら「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ、なーんだ」になるのに。まあ沙季の脳内裁判は読ませられないけどねw
前回まで想いが通じ合って甘い空気が出ていただけに何とももどかしい。それでなくても、ダメな異性の例を親で見てきたこの二人には、その潔癖さと罪悪感でイチャイチャへのハードルが高いというのに、この逆戻りは辛い。むしろもっとくっ付いて、なんならいくところまでいっちゃって慣れた方が後々の為に良いのにと、外野のおっさんは思ってしまうわけだけど。……無理なのは知ってる。
それでも他人(工藤教授)に相談して、自分たちの問題点を自覚して、久しぶりの「すり合わせ」でぎこちなさは解消できそうなところまで来れたのは良かった。新しい呼び方の難易度が悠太の方ばかり高いのが気になるが。
そんなわけで、もどかしさ全開でもっとイチャイチャが欲しい!と思わすにはいられない回だった。
次回、二人きりの週末から。拗れそうな予感しかしないんだが(苦笑)