いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか オラリオ・ストーリーズ」大森藤ノ(GA文庫)

アポロン・ファミリアとの戦争遊戯、イシュタル・ファミリアとの抗争、そして、言葉を解するモンスター、異端児との出会い……。
急成長する少年が巻き起こしてきた大騒動。その周囲で翻弄される人々との記録と記憶の数々――。
「英雄と娼婦」「異端児からの手紙」に加えてベルとリューが37階層に再び赴く書き下ろし小説を収録した短編集。


アニメ二期三期のBlu-ray特典小説のまとめと書き下ろし一編の短編集。表紙の通りに二期のヒロイン・春姫と、三期のヒロイン・ウィーネが主役。
春姫が主役の「英雄と娼婦」は、ドタバタラブコメな四編の短編集。
間違った方向に(娼婦としては正しい方向に)暴走する春姫と背伸びしてエスコートするベル、キレる他のヒロインたち。お約束のベタベタですな。
この話の肝はメインの二人ではなくアマゾネスのアイシャ。頼りない二人を的確にサポートするアイシャ姉さんがマジ姉さんで格好いい。
ウィーネが主役の「異端児からの手紙」は、冒頭にウィーネの手紙があってその元になったエピソードが語られる四編の短編集。
子供らしい可愛らしい文章の手紙と殺伐とした実際のエピソードのギャップに、救いのない世界で優しさと正義を貫こうとする『ダンまち』らしさが出ている気がする。
そして、こちらでも目立ったのはアイシャ。可愛い妹分の為に無理を通す姿が格好いい。
あと印象に残ったのは、リューに助けられたゼノスのカール。百合っていうから期待したのに栗鼠じゃないか! エルフともふもふ小動物の組み合わせもそれはそれで絵になるけど、そーじゃないんだよなー。
書き下ろしの「世界が見つめる先で示すもの」はベルたちがリューを連れてゼノスたちに会いに行く話。
感動の再会で抱き合う春姫とウィーネ。そうそうこれだよ百合って……と思ったが、これも違うか。これはただの仲良し姉妹ですな。まあそれはそれで尊いからヨシ!
サラッと出てきた禁忌の存在が今後本編にどう関わってくるのか気になるところ。
冒険者としての矜持、いきで優しい心根、妹分への愛情、アイシャの株が急上昇な短編集だった。