いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する」紙城境介(MF文庫J)

増加する凶悪犯罪に対抗し、探偵という職業の必要性が飛躍的に高まった現代。日本で唯一「国家探偵資格」を取得できる超難関校・真理峰探偵学園に今年、とある少年と少女が入学する。一人はかつて〈犯罪王〉と称された男の孫・不実崎未咲。もう一人は〈探偵王〉の養女・詩亜・E・ヘーゼルダイン。宿敵同士の末裔二人が、ここに邂逅したのだ!
そして始まる学園の日々。早速入学式から模擬事件が発生!? しかも、一番先に正解したはずの詩亜よりなぜか不実崎の方が点数が高くて──
「私は──あなたに挑戦します!」
「後悔すんなよ、お姫様」
これは、真実を競い合う新たな学園黙示録。最高峰の知的興奮がここにある!


凶悪犯罪が増え探偵業が全盛の時代。探偵王と呼ばれた名探偵の娘と犯罪王と呼ばれた男の孫が、探偵を養成する学園で相まみえる学園ミステリ。

キャラクター小説としても、ミステリとしても必然性と説得力がなくて中途半端。というのが率直な感想。
ミステリとしては推理やトリック以前の事件の作りが乱暴で違和感が強い。
結論や推理の過程が初めにあって、それに沿うように事件を作ったような歪さを感じる。特に二つ目の事件は事件直後の動きや捜査があまりに不自然で、逆に事件の真相を隠しているように感じる。
またキモである推理対決も、正直微妙。
一つ目の事件は、そもそも前提が間違ているという結論が普通に読めば初めから分かっているので茶番にしか感じらない。二つ目の事件はやたらと水位にこだわっているが、犯行を実行するのに背が高ければ高いほどいい条件下で犯人が低身長と決めつけているのが意味不明なら、氷のトリックは穴だらけでお粗末。そもそも氷を使うなら凶器もそれでいいじゃない。推理対決ものの話の作りとして、先行の推理は後攻の反論の為に隙を作ってあるのは分かるのだけど、それにしても。。。
キャラクター小説としてみると、初回からいきなりヒロインが六人も出てきた所為でそれぞれの印象が薄くなってしまっているのと、それに輪をかけてメインヒロインがチョロイン過ぎて魅力を感じない。それとラノベとは思えないほど挿絵が少ないのも痛い。
ストレートに可愛いメイドさんと、アクは強いが魅力があるロリ先輩と生徒会長は人気が出そうなキャラだったが、この中で顔がわかるのは生徒会長だけ。これでは沢山ヒロインを出した意味が半減だ。てか、なんでカイラちゃん(メイド)の挿絵がないんだよ!ふざけんな!←これが一番言いたかった。
直前に読んだのが伏線張り/回収がロジカルで隙がなかった『六人の嘘つきな大学生』だったのも災いしたかな。比べてしまうとどうしても粗ばかりが目立つ。