いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「石狩七穂のつくりおき 猫と肉じゃが、はじめました」竹岡葉月(ポプラ文庫ピュアフル)

派遣切りにあい求職中の七穂は、疎遠になっていた親戚の隆司が鬱で休職したと聞く。エリート街道まっしぐらのイケメンだった隆司だが、今や祖父の残した古民家に閉じこもり、盆栽いじりと居ついた猫の相手をするほかは、万年床で寝るばかりのとぼけた青年になり果てていた。抜群の家事能力を生かし隆司のお食事&見守り当番として奮闘する七穂だが、やがて彼が休職した本当の理由を知り……。
心もおなかもやさしく満たされる、おとなの夏休み物語。巻末レシピつき!


鬱で休職した従兄のおぼっちゃんの生活の世話をすることになってしまった求職中の家事好きな女性の話。
休職と求職を掛けてボケたかっただけ……ではないと思う。たぶん。
会社に世間に親、ご近所付き合い。多岐にわたる柵で雁字搦めになって生きにくい今の世の中で、懸命にもがく若者の物語。
主人公の七瀬と従兄の隆司が人が良いばかりに割食ってるエピソードが多く、腹立たしいこと苛立つことの多い作品だった。竹岡葉月作品らしいポジティブで明るい陽の気を放つ主人公でなかったら、最後まで読めなかったかも。その一方で、単発の竹岡作品には珍しく、ちゃんと言及した明確なハッピーエンドなので読後感はかなり良い。
あと、忘れちゃいけないのがタイトルの「つくりおき」要素。
ベースとなる料理を大量に作ってそこからアレンジして品数を増やしていく七瀬の賢いやり方が、食欲と作り手魂を刺激する。
肉じゃが具材の使いまわしはよくあるやつだけど、それ以外にも色々あるもんだ。牛筋レシピをめっちゃ試したいんだけど、夏だと色々な面で厳しいのがなあ。まったくなんて時期に出してくれたんだ。
そんなわけで厳しさ強め、その分最後のハッピー成分強め、飯テロはいつも通りな竹岡作品でございました。