いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「義妹生活9」三河ごーすと(MF文庫J)

学校では『恋人』、家では『兄妹』。すりあわせによって適切な距離を見つけた悠太と沙季だったが、直後、両親のいない『完全に二人きりの二日間』を過ごすことになってしまう。
果たして二人は適切な距離を保ち続けられるのか……。一方、学校のイベント、友達の青春と応援、新人バイト『後輩ちゃん』との交流など、悠太と沙季に新しい風が容赦なく吹きつけるが……?
『出会い』から一年、様々な出来事を経て変わった二人が迎える高校生活最後の夏。友情と青春と新たな出会いの先に『兄妹』が向き合う感情とは――。


再婚の両親は一泊二日の旅行で不在。二人きりの週末からスタート。
お付き合いしている若い男女が二人きりで夜までずっと一緒。何も起きないはずは……あるんだよなあ、この二人だと。前回、成績の低下や心の葛藤でスキンシップを躊躇うようになり、距離が出来てしまった二人の距離感がそのまま残ってしまっていた。
二人きりの夜よりも、バイト先の新人バイトの後輩の方が話題が大きいってどういうことなの?
それでもハプニングで身体と心の距離が近くなった瞬間があったのが救いか。今はこうでもしないとスキンシップ出来ない事実が悲しい。
後半は球技大会に高校野球の応援と、二人には縁遠いスポーツでお互いの意外な一面を知る話。
一応、外ではクラスメイトに感づかれるほどの仲の良さを見せていたけれど、内面にはかなりの温度差を感じる。
スポーツを通じて、悠太のいつもとは違う熱のある一面を見て好感度がアップしている沙季に対して、一旦距離が出来たことに安堵して、いたって冷静であまり感情が動いていないように見える悠太。おまけに途中に不穏なモノローグまで付いているし。 
この噛み合ってない感じがとても不安。このまま悠太の方が距離を作る形になってしまうのだろうか。表紙はこんなに新妻感が溢れているのに……。
「もどかしい/じれったい」がこの作品のコンセプトではあるけれど、一度は出来ていたことがなかなか元に戻らないもどかしさは、甘酸っぱさよりも焦燥感が強い。
次回夏休み編(たぶん)。変な距離感で落ち着いてしまった二人だが、受験生の身空に何か好転するようなイベントは起こってくれるだろうか。