いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「はたらく魔王さま! ES!!」和ヶ原聡司(電撃文庫)

真奥がまさかの高額当選!? 衝撃に揺れる魔王城の行方は――!?
趣味が無いと悩む恵美のため、アシエスや千穂たちとボーリング&カラオケ!?
いつもの日常話に花が咲く傍ら、自身の過去に思いを馳せる恵美。これは、本当の戦場も戦闘も、まだ人の死も知らない。そんな少女が勇者となった日の話――。
TVアニメ2ndSeason記念! 書き下ろし特別編で『はたらく魔王さま!』本編時系列の裏話をちょこっとひとつまみ。
フリーター魔王さまたちと過ごす日常と思い出のアンサンブル!


ザ・庶民な短編二編と、エミリアが勇者になるまでの紆余曲折を描いた中編の三編が収められたお久しぶりな『はたらく魔王さま!
そういえばアニメ二期やってたんだね。ネットじゃ視られないのでスルーだったけど。



魔王、重大な秘密を抱える
内容:魔王、突如挙動不審になる
挙動不審の原因、そんな理由かい! 30万にビビり散らかす魔王に脱力する話。
30万って真奥のバイトでのポディション、シフトの多さ、地理(東京)からすると給料2ヵ月分かそれ以下じゃない? たぶん。
平民の金銭感覚と小市民なメンタルが実に魔王様らしくて好感はもてるのだけど、流石にもう少しどっしり構えてくださいよ(苦笑)



勇者、趣味を探す
内容:ボーリングにカラオケと初めて若者らしい遊びをする勇者
幼少期から勇者であることを求められ、日本に来てからもバイトにストーカーに子育てにと大忙しで、遊ぶ暇なんて一切なかったエミリア。そりゃあ「休みと言われても」ってなるよね。子育ては絶賛継続中だし。
高校生・大学生らしい遊びに行ったり、料理に喜びを見出したり、平和な日本人してるエミリアにほっこりしんみりする話なのだけど、次の中編をやった後にこの話を配置した方が、ほっこりしんみり感が増したかなと思う。



勇者、勇者となった日を思い出す
内容:尖りまくっていた幼少期のエミリアの思い出
訳も分からず農村から連れ出され、唯一の肉親の父と一緒に故郷の村が滅ぼされたというのに誰も何もしてくれず、人類が魔族に滅ぼされようという情勢にも関わらず大人たちは勇者を政治の駆け引きに使うばかり。大人の、人間の愚かさを煮詰めたような周りの状況に、こんなんエミリアじゃなくてもグレるわ、と思わずにはいられない。
ベターハーフと破邪の衣を手にした時点で逃げ出さなかった時点でエミリアは十分に真面目だ。言うなればあれは“盗んだバイク”でしょう。
そんな可哀想な境遇がありつつも、個人の気質として猪侍なのはこの頃からあまり変わってないなと。でもまだ18歳、日本なら女子高生のなのだから、落ち着きとか思慮とか求めるのは酷だよなあ。