いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い」有象利路(電撃文庫)

「……大っ嫌い!」「奇遇だな。おれもだ」
かつて敵対する異能力者の組織に属し、反目し合う目的のために殺し合っていた二人。《羽根狩り》の異名を持つ犀川狼士と、《白魔》と呼ばれる最強の異能力者・柳良律花。血で血を洗う毎日を過ごし、まともな社会経験のない二人だったが……
「ろうくん、大好きっ」「俺もだよ、律花」
組織解散後はなぜかイチャコラ付き合った上に結婚していた!
いまや、毎朝会社に行く際に玄関で「いってらっしゃい」のチューをするくらいバカップルを地で行く夫婦。だがそんな甘い日常を営む二人にもお互いに言えない秘密や悩みがあり……?


どんな願いも叶えるとされる《濡羽の聖女》の《落とし羽》を巡って敵対する組織に所属し、幾度となく交戦してきた犀川狼士と柳楽律花。《濡羽の聖女》がこの世から消え、組織も争う理由もなくなった二人は……結婚していた!? 異能はないが人並外れた運動能力のある夫と氷の異能が使える妻が、一般人として普通の新婚夫婦生活を送るホームコメディ。

なんて綺麗な若夫婦なんだ。某賢勇者の作者とは思えないピュアさに浄化されそうだw
あくまでも現代社会で普通に暮らしている共働きの夫婦の日々の悩みや小さな幸せを描く物語で、異能設定は主に所謂ギャップ萌え要素として使われているのが特徴。章の頭に必ず敵対していた頃の思い出話が入ってきて、ツン(物理)とデレ(日常)の激しい温度差で攻撃してくる。おかげで妻の律花はもちろん、強面の夫・狼士まで可愛く見えてくる。
そんな、どこか微笑ましい若夫婦がお互いに補い合いながら生活し、日々の小さなすれ違いや意見の違いを一つ一つちゃんと言葉を交わしながら意識の擦り合わせをしていく様子が理想の夫婦像で実に尊い。それに各話「大好き」で始まり「大好き」で終わるのが良い。
異能持ちなのに刺激的なイベントがない代わりに、この夫婦良いなあとしみじみと楽しめる、まさに“ホーム”コメディな一冊だった。
最後綺麗に終わっているけれど、2巻が出て再開から付き合うまでの流れが語られないかな? そこ一番知りたいところですよ!