いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「クロエとオオエ」有川ひろ(講談社)

クロエとオオエ

「いや、ごめん要らないわ、これ」
「は!? い、要らないってお前……嵌めてみもせずに!?」
横浜で三大続いた宝石商(ジュエラー)の嫡男・大江頼任と、彫金を家業とする職人の娘・黒江彩。
最初のデートで頼任が贈ったリングを突き返してから、二人の関係は「メシ友」と「恋人」の間で謎のまま。
頼任の店のお得意様のブライダルジュエリーのオーダーを皮切りに、クロエがジュエリーデザインを引き受けるようになってから、二人の関係性が変わっていく。
宝石をのぞくと見える美しい別世界。これを表現できるのは彼女だけ。


宝石商のボンボンのオオエと彫金工の娘で本人も彫金細工師のクロエの出会いから結婚までを描いたお仕事小説×王道ラブコメな一冊。
学生時代は王子様としてチヤホヤされてきてこれが初恋の御曹司と、可愛い成分ほぼなしでカッコイイを地で行く仕事人の彼女による、友達感覚強めで湿度低め、仕事の話をしている方が楽しそうなカラッとした恋愛模様が繰り広げられる。
仕事は極めて有能なのに、プライベートな自分の功績や誉め言葉は確認せずにはいられない残念な彼氏と、そんな彼にウザい・くどいって面と向かって言える彼女。プレゼントは気に入らなければ突き返す彼女に、若干トラウマになりながらもめげずに再チャレンジする彼氏。二人ともデリカシーって単語が辞書に載ってないんじゃないかというくらい歯に衣着せぬ言い合いに、読んでいるこちらの方がハラハラしてしまうけど、なんだかんだ上手くいっている不思議な関係の二人だった。これだけ明け透けに言い合っていがみ合わないのは相当相性が良いんだろうなって、そう感じるところが一番の甘味ポイント。
お仕事小説としての側面、宝石やジュエリーの話は……まるで耳馴染みのない謎の呪文が飛び交っていた。
鉱石の話題は成分や産地の話になるので化学・地学で理系的な部分があって、ある程度興味を持って読めたが、ジュエリーのデザインやファッションの話になると、日本語で書かれているのに何が書いてあるのかさっぱりわからないお手上げ状態。ジュエリーには1ミリも興味がないからね、仕方ないね。
久々に有川先生のラブコメが読めたので、それだけで満足。


章末にあるジュエリーの挿絵の下にあるQRコードを読み取ると実物の写真が見られるらしいですよ。