いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



はかなき世界に、最期の歌を―宵月閑話 (トクマ・ノベルズEdge)

「宵月閑話 はかなき世界に、最期の歌を」佐々原史緒トクマ・ノベルズEdge
はかなき世界に、最期の歌を―宵月閑話 (トクマ・ノベルズEdge)

祖母の房子が亡くなった。警察側からは『自然死』という発表だった。しかし房子は殺された、と麻里は一人声を上げるが確かな証拠がないため、誰も麻里の声を聞こうとしない。真実が知りたい想いで麻里はクラスメイトの仁希に相談した。仁希の親戚には霊能者がいるらしい。最初は断られたが、「お礼はちゃんと払う」と言うと、手のひらを返したように屋敷に案内された。仁希はこの屋敷でメイドをしている。主人の閑はちょっと変わった青年だった。麻里はおののきながらも相談するが「やめたほうがいい」と言われてしまい……。哀しみが悲しみを呼ぶ歌が舞うホラーミステリ。


相変わらず小説のホラーの怖さはイマイチわからないわけですが、読み物としては問題なく楽しめた。
ホラーというだけあって全体的には暗い雰囲気ではあるものの、閑と仁希のやり取りや仁希の言動がコミカルで陰湿にならず軽く読めるのがいい。また、このやり取りにらしさが感じられてファンとしては嬉しい限り。サッカーの話題を忘れないのも流石ですw
内容は主人公である麻里の心理描写が主。
祖母の死の真相が明るみになるにつれて募っていく、言いようの無い不安、優しかった祖母の意外な一面へのやるせなさ、祖母を凶行へ駆り立ててしまった周りの人間への怒り等、負の感情が丁寧に描かれている。そして落としに落としたところでの、その全てを包み込むような綺麗なラストが胸を打つ。
清々しさと少しの苦味を伴った気持ちのいい読後感。うん、良かった。