ある夜、舞原零央はアパートの前で倒れていた女、譲原紗矢を助ける。帰る場所がないと語る彼女は居候を始め、次第に猜疑心に満ちた零央の心を解いていった。やがて零央が紗矢に惹かれ始めた頃、彼女は黙していた秘密を語り始める。その内容に驚く零央だったが、しかし、彼にも重大な秘密があって……。
巧妙に張り巡らされた伏線が、いくつも折り重なったエピソードで紐解かれる、新感覚の青春群像ストーリー。
あ、ヤバイ。これ、すごく好きだ。
これといった大きな出来事が起こるわけではなく面白かった楽しかったという感想が出てくるものではないし、恋愛の話だけどドキドキとかニヤニヤとか出来る甘さはない。なにがどうと聞かれると答えに窮するが、なぜか強烈に惹かれた。
内容は、少しずつ関わりと程度の差はあるが生い立ちに傷を持つ男女の群像劇。
あらすじにあるような“巧妙に張り巡らされた伏線が〜”なんてギミックは全然無く、ただそこにあるのは雨の匂いと相手を好きだという想いだけ。その想い一つで強くも弱くもずるくも醜くもなる彼らの姿が、どうしようもなく愛おしく感じた。
言ってることは青臭いし、好きになれない人物もいる。違和感のある台詞やシーンもあるのだけど、そこを含めてもどうしようもなく好きだと言える一冊。
うん、雨の音が聞こえる時に読み返そう。