気が付くと、空色の傘を手に朽ち果てた家の中で立ち尽くしていた少女。自分は誰なのか、なぜここにいるのか──少女の記憶は曖昧だ。誰もいない街を彷徨い、ようやく出会った青年・シグ。少女は自分が人間ではなく、モノに宿る「九十九神」だと教えられる。「きっと、お前は傘の九十九神なんだろう」とシグ。そして少女はカサと名付けられる。人間がいなくなった町を舞台に、置き去りにされたカミ=「九十九神」たちが人間の真似事をして暮らすノスタルジック・ファンタジー。大人気シリーズ「RIGHT×LIGHT」の著者が送る完全新作!
ライトノベルの一つの型と言える、切なくて優しい短中編集の物語。
荒廃した街に雨のにおい、雰囲気は好み。
でも、それ以上に何か感じるところはないなあ。
こういう切なくて優しい物語は、助ける方か助けられる方のどちらかに感情移入してこそ涙を誘うのに、九十九神たちは人間だった頃の記憶はない(一応、ヒロインのカサや第2話のアヤノのおぼろげには分かるが全然足りない)、町が廃れ人が居なくなった理由もわからない、では背景が分からない。
やっぱりその人の背景が分かってこその感情移入だし、彼女たちの強い願い/想いも根本が分からないのでぼやけてしまっている。
ライトノベルではよくあるタイプの話なので、設定で他と差別化したかったのではないかと思うが、その設定がちょっと失敗だったように思う。