いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「スメラギガタリ 〜新皇復活篇〜」宇野朴人(メディアワークス文庫)

スメラギガタリ―新皇復活篇 (メディアワークス文庫)
スメラギガタリ―新皇復活篇 (メディアワークス文庫)

1984年、帝都東京。若くも卓越した陰陽師として働く女性・土御門晴見は、ある日、かねてより陰陽寮による日本の呪的業界の一元的支配に不満を募らせていた在野の術士・芦屋道代から呪力蜂起の宣言を受ける。誘拐を予告された皇族の姫君・澄香内親王殿下を守るため、古くより皇室に仕える退魔の一族の末裔・殿克夜らと共に事態へ備える晴見らだったが、相手の思惑は彼女らの想像を超えたところにあった。
一方、姫君の身代わりに攫われた華族の少年・継実夜統は、道代らと行動を共にしながら、帝都の裏側に隠された歴史の闇を知り……。壮大なる伝奇譚、ここに語りの口を切る。

西洋文化流入が少なく陰陽の力が世に認知されている1984年の日本を舞台にした陰陽師もの。



目的を見失ってしまった少年の話であり、一族が代々受けてきた誹り晴らそうとする少女の話であり、後に自分が長となる陰陽庁の改革を企む少女の話であり、平将門の一代記でもあった物語。そんなわけで凄いボリューム。
また、陣営関係なく誰もが主人公のように書かれているので、明確な悪が居ないのも特徴。あえていうなら旧体制が悪か。いやホント誰が主人公なんだろう。誰に感情移入するか悩むという体験は初めてかも。キャラとして好みなのは晴見だったのに、感情移入できて応援したくなったのは晴見の敵の道代だった。
物語としても前半は多人数視点ならではの思惑の絡み合いが面白く、後半の道代主動で進む陰陽庁の鼻を明かす計画が怒涛の展開かつ痛快で面白い。
その反面、焦点がぼやけてしまってるような気もする。やり方とゴールは示されても道中が全くの霧の中で、何のためにそれをやっているの分からないところが多々ある。伏線を張るだけ張って事実を隠しすぎたせいもあるかな。
そんなわけで大量の真実や目的を伏せたまま弐巻に続いたので、基本的には楽しく読めたがモヤモヤが残るところも多い作品だった。