いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「デスニードラウンド ラウンド1」アサウラ(オーバーラップ文庫)

デスニードラウンド ラウンド1 (オーバーラップ文庫)
デスニードラウンド ラウンド1 (オーバーラップ文庫)

多額の借金を持つ女子高生のユリは返済のために、銃を持ち、己の命をリスクに晒す……そんな危険な傭兵稼業に手を出した。彼女は合法・非合法を問わず危険な仕事を請け負う「死に損ない」ばかりの松倉チームで仕事を始めるが、なぜか連れて行かれたのは都内のバーガーショップ
「こ、これ、ヤバくないですか!? 超ヤバイですよね!?」
ユリの初仕事は、なんとバーガーショップのマスコットキャラクターを襲撃することだった…!
不可思議な仕事依頼をきっかけに、銃弾と血と笑い声が飛び交う常軌を逸した夜が始まる──ユリは未来を切り開くために戦い抜けるのか!?


なんだこの酔った勢いで作ってしまったような設定はwww と思ったら旅のハイテンション+疲れだったか。
そんなわけで本作は、ファーストフード業界に真っ向からケンカを売る色々とアウトに限りなく近いガンアクション。
というか、この内容なら冒頭で夢の国にまでケンカ売る必要はなかったよね? ……要らない冒険でその身の危険に晒してまで笑いを取る。アサウラ先生とオーバーラップ文庫さんは芸人の鏡やで。
内容としては作者のデビュー当時の作風“少女と銃”を軸としたコメディありシリアスありの物語で、そのごった煮感と決して萌えには走らない姿勢が一昔前のライトノベルを思わせる。
その中で先に目につくのはコメディの方。
設定が持つシュールさと、主人公・ユリの持ち前の明るさと仲間たちのノリの良さで笑いが生む。そして圧巻は食事シーン。ベン・トーで培ったノウハウをいかんなく発揮するそれは空腹時に読むと凶器になるレベル。
後半になって来ると次第にシリアスに傾く。
ユリの置かれた境遇と敵の境遇が絡んで遣る瀬無さが増していく展開に胸が痛む。こんなふざけた内容なのに後味がここまでビターとは。また、狂気がほとばしるアクションシーンにはホラーな要素もあって、最後まで息をつかせてくれない。
あらすじの時点ではコメディ一色かと思ったが、予想以上に少女の物語が重かった。その分話に厚みがあって笑いとシリアスのバランスが良く面白かった。